だい

SOSタイタニック/忘れえぬ夜のだいのレビュー・感想・評価

4.3
くっそ面白い。

タイタニック号の沈没についての客観的事実と、
生存者の証言からうかがい知れる船内の様子。
それらを基に極力事実に忠実にドラマ化してるからこそ醸し出される圧倒的な緊張と諦念。

あのね、
事実を映画化するには、煽情的な脚色はやっぱりいらんのですよ。
事実を淡々と再現することで、
僕らはその人たちと感覚を共有できる。



次第に傾いていく船に巻き起こる混乱。

自棄になって酒に溺れる者。
耐えられなくなって海に飛び込む者。
他人の救命胴衣を奪おうとする者。
いて当たり前なのだ。
生きたいのはみんな一緒で、死にたくないのもみんな一緒なのだ。

でも、
プロとして最後まで「職務」を優先することを選ぶ者。
家族だけでも助けようとし自らは死を受け容れる者。
最期の瞬間を愛する人と共に迎えることを選ぶ者。
避けられない死を前により立派にその瞬間を迎えようとする者。

そんな人たちの覚悟。矜恃。
しかもこれは決して煽情的な創作ではなくて、
実際の生存者の証言にあった実際の「覚悟」で、

目の前に死が迫った時、ぼくらは何を思うのかって、
そんなんはそうなってみるまで想像もつかないことなんだけども、
でもさ、
そんな風に自分の終わりを受け容れることができる人たちがいたって、
自分にできるのかなって、
あんな静かにいられるのかなって、
いろいろ想像したら胸が張り裂けそうになるのだ。


必死に、生きたいと思って2等客室から甲板まで辿り着いたものの、
全員が生きる術は存在しないということを見て取って、
せめて大事な人だけは避難させようとすぐに決意した男性客。
その瞬間の彼の絶望と覚悟。
想像して胸が張り裂けそうになるのだ。


そんな人たちに助けられたことを自覚して、
巻き込まれることを覚悟の上で、
「落ちた人たちを助けに行こう!」と主張する避難ボートの人たち。

人間って、すごいな。
マジで、すごいな。


余計な脚色をしてないからこそ、
素直に畏敬することができるのだ。



近距離にいたのに何も気付けなかったカリフォルニアン号。
気付けなかったのは仕方ないのだ。
彼らは確かに他船への意識は足りなかったけれども、
それは決してルールを破ったようなものではないのだ。

だからこそ、
彼らはその後何を背負って生きたんだろうな。

それもまた、つらいことなのだ。
だい

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