ひろ

俺たちに明日はないのひろのレビュー・感想・評価

俺たちに明日はない(1967年製作の映画)
4.3
実在した銀行強盗であるボニーとクライドを題材にして、アーサー・ペン監督によって製作された1967年のアメリカ映画

アメリカン・ニューシネマの最初の作品と言われる映画。全く期待されずB級映画として公開されたが、空前の大ヒット作品となった。無軌道に生きる若者が破滅に向かうという、アンチ・ハッピー・エンドこそがアメリカン・ニューシネマの魅力だが、この作品はまさに金字塔と言える作品。

禁酒法と大恐慌によりどん底の30年代だったからこそ、凶悪犯にも関わらず、自由に生きたボニー&クライドは英雄扱いされたのだろう。そして、映画が公開された67年は、終わりの見えないヴェトナム戦争でアメリカが暗かった時代。そんな時代に、この映画はぴったりハマったからこそ大ヒットしたんだと思う。

人を殺すシーンを映したことや、セックス描写も封建的な60年代に衝撃を与えた。いま観たら大したシーンではないが、この映画が後の映画に与えた影響は計り知れない。破天荒に生きた2人とラストシーンの緩急の差は芸術的。

ボニー役のフェイ・ダナウェイが着ていたスタイリッシュなファッションは大流行し、未だに評価されている。製作でもあったクライド役のウォーレン・ビーティもかっこいい。オスカーを受賞したエステル・パーソンズの演技は熱演だったし、まだ映画デビューしたばかりのジーン・ハックマンやジーン・ワイルダーも新鮮だった。

最高なのは邦題。原題は「ボニー&クライド」だが、「俺たちに明日はない」は完璧と言ってもいいタイトル。同じアメリカン・ニューシネマの「明日に向かって撃て」も素晴らしい邦題だけど、この時代の邦題はたまにすごいレベルが高いものがある。こんなかっこいいタイトルの映画は観るしかないでしょ。
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