爆裂BOX

悪を呼ぶ少年の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

悪を呼ぶ少年(1972年製作の映画)
3.7
コネチカット州のとある農村で暮らす一卵性双生児の少年ホランドとナイルズ。彼らの周囲で次々と不審な死が相次ぐ…というストーリー。
トマス・トライオン原作を作者自身が脚色し、製作総指揮も務めたサイコ・サスペンスです。
農村で暮らすホランドとナイルズ。祖母や母親思いで優しいナイルズと悪戯好きで時折残酷さをのぞかせるホランドの二人の周りで従兄弟や近所の口うるさい老婦人アドが次々不審な死を遂げていくという内容です。
邪悪な子供を描いた作品としては「悪い種子」に次いで古典と言える作品ですね。前半は農村で無邪気に元気に暮らすナイルズと彼の暮らすペリー家の面々や近所の人などの紹介されて登場人物も物語に深く関わってこない人まで一気に出てくるので関係性が分り辛いのとゆったり進むので結構眠くなりますね。
れでも合間に起こる死者が出るシーンは、ゴア描写はおろか流血描写もないですが、納屋で少年が飛び降りた先の藁に鋤が突き出てて辺りに悲鳴が響き渡りって途切れたり、隣家の口うるさい老婦人はネズミを見せられて驚いて倒れる音が聞こえた後、配達する八百屋さんの「最近姿が見えないし妙な臭いがする」という台詞や窓から覗き込んだ祖母の表情で直接描写は無くても最悪の事態が起こったと観てる者に感じさせる上品な演出が良いですね。
優しい祖母がナイルズに教える精神統一してなりたいものになった姿を想像させるゲームや見世物小屋で見た脱出マジックに水頭症の胎児のホルマリン漬け、ナイルズが母親に聞かせるホランドが好きだったチェンジリングの昔話などの伏線が後半に聞いてくる演出も地味ながら素晴らしい。
ホランドとナイルズは実際の双子の子役が演じてるようですが、髪形も服装も一緒だけどちゃんと違いが判る演出も良いですね。
双子に関わる秘密は始まってすぐわかりますが(同一画面に映らない演出だったり)、それをオチに持ってこず中盤で明らかにして、そこからの後半はそこから恐怖が始まると言わんばかりに何かとんでもないことが起こりそうな不穏な空気と緊張感が漂っていて引き付けられました。特にナイルズが生まれたばかりの赤ちゃんが眠る部屋に入って来てカーテン閉めたりする何気ない仕草が妙に怖くてドキドキしました。嵐が到来するのもその雰囲気を盛り上げてくれます。
そして終盤に起こる最悪の惨劇…樽持ってきた時点で「まさか…」と思いましたが、蓋開けてチラッと中身が映った後の周囲の人間の反応で画面に直接出てこなくても十分すぎるくらいにショッキングな場面になっていました。そして祖母が悲壮な決意のもと起こす行動と吹き上がる炎も暗澹とした気分にさせます。
その気分をさらに深くしてくれる後味の悪いオチも秀逸です。今「彼」はどっちなんだろう…
祖母も孫を思って教えたんですし、深いショックと喪失感を味わった少年も救いを求めてそれにのめりこんでいったわけですし、遣る瀬無い気分にさせますね。回想シーン見る限り猫井戸に落とそうとしたりホランドは元々異常性のある子だったのかな。
派手さのない静かで地味な作品ですし、兄弟に関するオチは最初の方で読めてしまいますが、全体通して上品な雰囲気で静かな怖さと気味悪さ感じさせる秀作でした。