垂直落下式サミング

座頭市逆手斬りの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

座頭市逆手斬り(1965年製作の映画)
3.5
タイトルどうり勝新の逆手斬りを堪能できる作品。二刀流の二段斬りもみられる。特筆すべきは、本作が藤山寛美のシリーズ登段により、プログラムピクチャー色を一層強くした娯楽作品になっていることだろう。
今回は旅の同行者にペーソスよりもユーモアが求められ、泣きも笑いも自由自在な名喜劇役者が、その役回りを一手に買って出ることで、実に飄々とした可笑しさを演じてみせている。
ラストでは霧がかった漁場で大人数を相手取りリズムよく倒してゆくスピーディーな殺陣をみせ、そいつらはその仕込み杖の一閃に吸い寄せられるかのように地に伏していく。アクションシーンの市の立ち回りは華麗で多くの敵を斬るのだが、これといって強い用心棒もいないし、魅力的な女優を出すでもなく、藤山寛美の魅力も最大限発揮できてはおらず、座頭市の無敵の無頼性だけが一人歩きしていたように思う。友を斬り、兄を斬り、師を斬ってきた市にはもうチンケな田舎ヤクザしか斬りあう相手が残されていないのか。
藤山寛美のニセ座頭市が口ばっかりなせいで座頭市の悪評が広まってしまい、道中立ち寄った茶屋で自身の武勇をバカにされてキレる市は可愛いのだけど、こんなことで筋者が一般人にキレるのはなんか違う気もする。