垂直落下式サミング

西遊記の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

西遊記(2007年製作の映画)
3.5
イケイケな時期のフジテレビ制作なので、かなりのチャラさ。ゴールデンタイムバラエティのノリというか、ワンピース的なヤンキーマインドというか、そういう時代のあれこれがたくさん凝縮されているのが、香取慎吾版の西遊記。
旅をともにするのは、慎吾ちゃんほか、ウッチャン、伊藤淳史、深津絵里、めちゃめちゃフジテレビっぽいメンツ。なまかなまか!
ここに描かれますは、たぶん一番有名な妖仙・金角銀角兄弟のエピソード。西遊記って言えばこのはなしっ!てくらい大ネタ中の大ネタだ。なんでドラマでやらないんだろうと思ったら、劇場版が控えてたのか。
金角大王と銀角大王は、ふたりのコンビネーションと扱う五つの法宝が厄介なのに。なんでベイダーとシディアスの五番煎じみたいな薄くてつまんねえ悪役にしちゃったんすかね。
コイツらが、この世で何よりも兄弟が大事であって、その他はどうなっても知ったこっちゃねえわって考えで民を苦しめているみたいな設定だったら、これまで悟空が言い続けてきた「なまか」の精神との対比になってよかったと思うんだけどな。まあ、身内第一主義批判はフジテレビ的エンタメ論の否定に繋がりかねないからな、やらないか…。
このテレビシリーズで一番好きなのは、猪八戒が妊娠するエピソード。日本版は三蔵を女優が演じているため、生々しくなりすぎるからとの配慮で妊娠描写はなし。コミカルな役回りで猪八戒が子母河のエピソードを担っているが、ホントに出産しちゃうのはビックリした。
シュワルツェネッガーの『ジュニア』では、オトコには子宮も産道もないからってんで、帝王切開で赤ん坊を取り上げていたのだが、猪八戒は正攻法のひっひっふーなマタニティ。お茶の間で難産しすぎもよくないって判断だったのだろうけど、出る場所がないのにどうやって出産したの?これはこれでグロいはなし。ひょええ…。
この香取慎吾版は、最後まで「俺たちの旅は続く!」で締め括っちゃったのがよくないんだと思う。仏教の力を軽んじているようにみえる。1クールドラマだったとしても、天竺大雷音寺まで、むりやりリアルタイムアタックしてアジアを救うべきだった。
道中が大事だってのはその通りなんだけど、道中よりもさらに大事な取経という至上命題があるのがシルクロードの旅であるよ。なまかなまか!