わかめ昆布

わが恋せし乙女のわかめ昆布のレビュー・感想・評価

わが恋せし乙女(1946年製作の映画)
3.7
軽やかな牛の唄が楽しい木下恵介流メルヘン鬱!
日本なのかも分からなくなるほど、壮大な田舎でファンタジー的空気が強い。

木下作品は、構図やカメラワークに奇をてらってはいないもののそれと分かるものが必ずあり、今作は特にお見事。
バランスの良い画面で洗練されている。

特に化粧するヒロインの構図の冴え方!
そしてその横でハーモニカを奏でる弟。この清廉な邦画は何なんだ。ある意味浮世離れ。

兄妹の微妙な空気と沈黙は、完全に少女漫画。
花に包まれた、かわいい手作り馬車で走りぬけるシーンでメルヘン度は最高潮に!
ハンカチを振り回し走る妹のアニメの主人公感よ。

ヒロインが無邪気だからこそ余計に切ない。
兄ちゃんの一生切ない顔に目を逸らしたくなる。
ヒロインの恋人も、あり得ないほど聖人で穏やか。そこも童話的。

でも兄弟として育てられたんだし、親ぐるみで結婚させようとするのは、妹からしたらかなり気持ち悪いのでは…

東山千栄子は安定のみんなのお母さん。

ファンタジーで美しいのに倫理的に少し壊れている繊細なバランスが良かった。
木下監督は作品によりけり、さまざまな空気感が楽しめて興味深い。
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