「いい考えだと思ったんだがなあ……」
ジャン・ギャバンの台詞が切なすぎる……。
ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の悲観主義が炸裂した名画『我等の仲間』。
ちなみに原題の『ベル・エキップ(我らの家)』は本作に登場するレストランに付けられた名前だが、三谷幸喜の『王様のレストラン』の舞台となるレストランも同じ名前である。
数年前に発売されたHDリマスター版が良い。高画質のモノクロ映像に終始目が釘付けになった。
失業中の五人の男たち。警察に追われたり、妻に逃げられたり、住み処を追い出されたりと人生負け組だった彼らだったが、友情の絆は人一倍強かった。
宝くじも五人で仲良く金を出し合って購入したのだが、これがまさか当たるとは彼ら自身その時には思いもよらなかった。
やがて一等に当たった彼らは十万フランの大金を手にし、皆で祝杯をあげるのだった。
この金をどう使おうか。議論する中、メンバーの一人ジャン(演:ギャバン)はこの金を元手に共同でレストランを経営しようと提案する。
他の四人もこの話に賛同し、購入したボロ山荘を自分たちの手でレストランに改築しようとする。
しかし、シャルル(演:シャルル・ヴァネル)の元妻(演:ヴィヴィアヌ・ロマンス)が大金があることを嗅ぎ付けて、再び接近するようになってから順調だった歯車が狂い始める。
幸せの絶頂のときに一気に不幸のどん底まで突き落とす。デュヴィヴィエはこれが本当に上手い監督である。
本作ではギャバンが「川辺をそぞろ歩けば」を唄う場面や、ヴァネルとようやく和解してレストランの開店初日を迎えた場面がそれで、このあとああいう展開になるとは誰が予想できようか。
それまで『にんじん』といった文芸作品の映画化を得意にしていたデュヴィヴィエが名脚本家シャルル・スパークとタッグを組んだ初オリジナル作品である。
あのジャン・ルノワールが惚れ込んで『大いなる幻影』と交換させてくれと申し入れたという(とは言ってもルノワール自身は否定してるそうだけど笑)。
先程も書いた通り、映像の凄さに驚いたが、それは単に画面がクリアになっただけではなく、元々のカット割りやカメラワークが秀逸だったから。
五人だけではなくアパートの住人全員が宝くじが当たったことに大浮かれする場面。四階ぐらいから下のフロアへとカメラがパンするのも印象的。
またラストの衝撃シーンで、今にも泣き出しそうな眼のギャバンの顔が大写しになるカットも心に深く残った。
■映画 DATA==========================
監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ
脚本:ジュリアン・デュヴィヴィエ/シャルル・スパーク
音楽:モーリス・ジョベール/モーリス・イヴェン
撮影:ジュール・クリュージェ
公開:1936年9月17日(仏)/1937年4月29日(日)