シンタロー

イースト/ウェスト 遙かなる祖国のシンタローのレビュー・感想・評価

3.8
冷戦下の運命に翻弄された人々を骨太に描く大作。1946年、スターリンは西側に亡命していたロシア人に、希望する者は旅券を再発行し、ソ連本国へ戻る事もできると発表。フランスに亡命していたアレクセイは、フランス人の妻マリー、息子のセルゲイと共にソ連に帰国するが、到着したオデッサでマリーは英国スパイと疑われ拷問を受ける。実は帰国した者のほとんどは処刑か投獄されていた…アレクセイが名医だった事もあり、何とか家族との生活を許され、キーエフへ連行される。用意された住居では5つの家族との共同生活が強いられ、互いを監視し合う酷い環境。マリーはこのままでは死んでしまう、耐えられないと、祖国フランスへの帰国を強く望むのだが…。
自分の希望の為なら危険も顧みないマリーと、家族を救う為に党員になりきって機を伺うアレクセイの間に軋轢が生じ、遂にはダブル不倫!マリーの相手は元管理人の孫サーシャ、ってまだ学生だし!アレクセイの相手は今の管理人オルガ…どっちもひとつ屋根の下の同居人っていう、なかなかぶっ飛んだ夫婦。マリーが助けを求めて手紙を託す大女優ガブリエル役でカトリーヌ・ドヌーヴ様まで登場しちゃって、前半から濃いなぁ。
中盤はマリーとサーシャの関係…自らの希望を託すかのようにサーシャの亡命に手を貸すマリー。「君から学んだ。諦めない。自由をこの手に掴むまで。」とても情熱的に描かれてたのに、結局2人の関係って…マリーとアレクセイが復縁したのかも曖昧なまま、マリーは逮捕されてしまう…と中盤はやや間延び感あったかな。
後半は駆足気味だったけど感動したなぁ。マリーの懺悔と、アレクセイの深すぎる愛。ドキドキしながら最後まで見守ってしまった。演者は皆さん素晴らしかった。サンドリーヌ・ボネールは役柄上ほとんどすっぴんで、みすぼらしい衣装が多かったけど、それすらまぶしく魅せてしまう確かな演技力が流石。殴られ過ぎて可哀想でしたけどね。オレグ・メンシコフの抑えた芝居も泣けました。内容が濃くて少し疲れましたが、見応えは抜群な力作でした。
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