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斬るのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

斬る(1962年製作の映画)
3.3
柴田錬三郎の同名小説を、新藤兼人が脚色し、三隅研次が監督した、市川雷蔵主演による「剣3部作」の第1作。(1962)
飯田藩でお家騒動があり、家老の命を受けて腰元(藤村志保)が殿の愛妾を短刀で差す。
使命を全うしたこの腰元が処刑されることになり、首切り役に選ばれたのが、彼女を救い1年間一緒に暮らしていた長岡藩の多田草司(天知茂)だった。
腰元は切り手の多田との間に子どもをもうけていて、密かに里子に出されていた子どもが、主人公の小諸藩士、高倉信吾(市川雷蔵)である。
高倉は3年間の武者修行で邪剣“三絃の構え”を会得し戻ってくるが、実の父だと思っていた養父高倉信右衛門( 浅野進治郎)が娘(渚まゆみ)ともども襲われ、死に際に真実を聞かされる。
傷心して再び旅にでた高倉は、やがて、幕府大目付松平大炊頭(柳永二郎)に仕え、彼の命を守る護衛となる…。

主人公の生き方を支えるのは、
3人の女性、
・愛する男に微笑みさえ浮かべ毅然として斬られる実の母、山口藤子(藤村志保)
・養父とともに殺される妹、高倉芳尾( 渚まゆみ)
・弟の身代わりとなる行きずりの武家の女性、田所佐代 (万里昌代)
の美しい死のイメージである。

この潔い死というイメージは主人公のラストに繋がっていく。
右翼的、国粋的、デカダンス的な感情を耽美的に表現したこの映画は、愛好者から記憶され続けるだろう。
映像的には、ラストの"襖、梅、ウグイス"で象徴される様式美が印象に残る。
なお、敵を一刀両断する有名なシーンは、好みが分かれるだろう。
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