櫻イミト

悪魔の往く町の櫻イミトのレビュー・感想・評価

悪魔の往く町(1947年製作の映画)
4.0
「グランド・ホテル」(1932)でアカデミー作品賞を受賞したエドマンド・グールディング監督による心理サスペンス。「ナイトメア・アリー」(2021)と同原作の最初の映画化作品。原題は「NIGHTMARE ALLEY(悪夢の路地)」

見世物一座のスタン(タイロン・パワー)は、花形のジーナから透視術の秘密を教わり、恋人のモリ―とともに独立。読心術師として人気を博していくいくが、野心のあまり手法がエスカレートしていき。。。

大きな謎を残すカルト作だった。最初はトリックを使った透視だったのが、徐々に他人との心理戦になっていく。そこに悪だくみを持つ心理療法士が入ってきて混乱し始める。そして最後には、観客も誰が本当の話をしているのかわからなくなる・・・。極めつけがパトカーのサイレン音で、それが映画の中で実際に鳴っている音なのか、主人公の幻聴を表現するための演出音なのかが、最後まで観客に知らされないのだ。何だか、読むと気が狂う小説「ドグラ・マグラ」を思い出した。

位置づけとしてはフィルム・ノワール作品なので、陰影あるモノクロ映像も楽しめる。前半のカーニバル見世物シーンも個人的に好み。ラストはエンターテイメント作品の枠をはみ出さないように納めているが、謎の不安を残すユニークな怪作だと思う。
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