fallenleaves

東京湾/左ききの狙撃者 東京湾のfallenleavesのレビュー・感想・評価

5.0
とんでもないものを観てしまった。どうして佐田啓二企画で、こんなとんでもないものが1962年に出現したのか、全く理解に苦しむ。序盤に男が狙撃され、車が急発進するシーンがあるが、明らかにサイレント映画のような撮り方。その後も麻薬中毒に苦しむ女や、ラスト近くの犯人との格闘シーンで口から血を流しながら闘う西村晃はドイツ表現主義映画のような演出。劇中で多用されるPOV。おまけにこの映画、街中ロケを手持ちカメラで切り取ったカットも多用され、明らかにヌーヴェル・ヴァーグを意識した要素も取り込んでいる。だからといって洒脱な映画になるでもなく、西村晃とその戦友だった犯人の対峙をテーマとした、戦争の傷跡を抉るような映画なのである。特攻隊の生き残りという経歴を持つ西村晃だからこその鬼気迫る演技に説得力があり、男前の石崎二郎が主演扱いとはなっているものの、完全に西村晃の主演映画となっている。その点で『田舎刑事 まぼろしの特攻隊』の先駆を成す作品。
fallenleaves

fallenleaves