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パプリカのkuuのレビュー・感想・評価

パプリカ(2006年製作の映画)
3.8
『パプリカ』
製作年 2006年。上映時間 90分。
筒井康隆による同名SF小説をアニメーション監督今敏が映画化。

表の顔は精神医療研究所に勤めるセラピー機器の研究者、裏の顔は“パプリカ”というコードネームを持つセラピスト千葉敦子は他人の夢をスキャンすることが出来るというセラピー機器“DCミニ”を使い、日々患者の迷える心をケアしていた。
だがある日、その“DCミニ”が何者かによって盗まれてしまう。。。

夢は潜在意識の想像力の窓。
なんて云った人がいた。
たしかに、記憶を操作して、現実の物理的法則に縛られない世界を作り上げる。
色彩と可能性の無限の波は、その存在に正当性を必要としない。
心理学やと、夢は対象の心理を探るための手法やと聞く。
繰り返し見る悪夢は、ストレスによる不安や恐怖、精神障害の兆候かもしれない。
故・今敏監督は、最後の長編映画で筒井の小説のコンセプトを生かし、日本のアニメーションの限界に再び挑戦した。
今作品は、観てる側の注意力が試される幻覚作用のある、歪んだ精神に作用する薬物による熱病の夢に相当する。
『PERFECT BLUE』が大人にとって親しみやすい長編であるのに対し、『パプリカ』はその代わりにアニメのファンを惹きつける傾向がある。 しかし、この物語には忍耐が必要かな。
画期的な新しい心理療法の科学責任者であるセラピスト千葉敦子の性格に似た趣のあるアプローチ。
しかし、夢の記録装置が盗まれると、意味不明な夢の洪水が現実の世界と融合し始める。
踊るカエル、奇妙な人形、くねくね動く電化製品、巨大な神道の門、そして、金色の猫の像など、夢見る人々の心を悩ませる不吉な熱病の夢の合成物のオンパレード。
千葉が演じる夢の分身パプリカにとって、このような壮大な映像のクラスター爆弾に潜入するのは簡単なことではない。
しかし、この魅惑的な夢幻劇の下には、コントロールという洗練されたテーマを中心とした物語がある。
自分の人生を取り戻す。
粉川刑事は、不安を治療するために "DCミニ "を試しているときに、これを見事に表現している。
殺人事件に関して繰り返し見る悪夢のような夢のせいで、自分の人生をコントロールすることができず、幼少期の過去のトラウマのせいで映画館で映画を見ることもできない。
夢の中の現在と過去の融合は、我々の潜在意識が心に感染させる呪術的な能力を完璧に物語っている。
非科学的な視点から見りゃ、それは精神障害の発症の大きな理由付けとなる。
もちろん、千葉が肥満児で天才的な同僚の時田浩作に抱いている未発達な愛情は、心理療法に関する中心的な物語をいくらか否定しているけど、それでもなお、コントロールするという行動に焦点を当てている。
彼女は苦悩の中でようやく自分の感情をコントロールする。
夢の中の夢というコンセプトは、ノーラン監督の大作『インセプション』にインスピレーションを与えたらしいが、この小説のオリジナリティを損なうことなく今監督の創造性を表現することを可能にしたSFの殻にすぎない。
『LOLA(ローラ)』ちゅうボーカロイドを独創的に利用した平沢の陶酔的な音楽は云うまでもない。
初見でストーリーを完全に理解できるやろか?
多分難しい。
サイコセラピーのコンセプトを説明する台詞が時折ぎこちなく出てきたとしても。
今作品を数回観て、ようやく今監督の映画的表現芸術を多少なりとも理解することができた。
それは最も穏やかなSFである。
心理学の極致。
そして、最も『アニメ』らしいアニメです。
今 敏さん、あなたは伝説的な空想家であり、あの世でもそうあり続けるていてほしい。。。
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