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喝采のSPNminacoのレビュー・感想・評価

喝采(1929年製作の映画)
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ショウガールでシングルマザーのキティ、修道院からショウの世界へ引き摺り込まれた娘エイプリル。幸せを求める女の受難と神話。
母と娘、聖と俗、宝石と十字架、子守唄と祈りの言葉、ショウビズの光と影。とりわけ影を強調した演出が凝っている。キティを支配するヒモ男の見下した視点、騙し操る大きな影と従うしかないちっぽけなキティの構図、男たちの視線とそれに曝されるステージの女たちが交錯するアップショット…場末のショウガールであることをとことん惨めに見せつけるから残酷だ。紙切れが風に舞うオープニング、繰り返す脚のショットも、女たちの哀れな扱いを思わせる。
そんな底辺で見下ろされた母と対照的に、恋に落ちたエイプリルと水兵はブルックリン・ブリッジや摩天楼の上で街を見下ろす。そうして幸せを掴みかけたエイプリルだが、母のために縁談を断る場面はまた大きな影と見下ろした視点となり、悲しい別れの舞台は地下鉄だ。もっと上へと夢見ても叶わぬ母、ステージより広い世界への道をあきらめる娘。ヤケクソ捨て身の「スター誕生」はあまりに悲痛すぎてゾッとさせる。
だが、キティは聖母である。水兵がその階段を下りて底辺からエイプリルを救いに来ると、その上には輝く聖母像となったキティがいる。夢は破れ、祈りは叶う。そんな神話。
話は古典ながら、ヘレン・モーガンとジョーン・ピアーズの熱演とメリハリの効いた巧みな空間構図がメロドラマを盛り上げる。時折挟まれる当時のNYロケーションも貴重。
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