靜

ハードロマンチッカーの靜のレビュー・感想・評価

ハードロマンチッカー(2011年製作の映画)
-
殴ったり蹴ったり血が出ているのに心はまったく痛まない。ひりひりするような何か、切迫した何かが、登場人物の誰一人としてなかった。
主人公のグーは暴力を一番手っ取り早くて簡単なものとして扱っているし、自分の立場を悪くしようが常に暴力を選んでいる。面倒くさいんだろう。
現状を打破するための暴力ではないから、とても空虚さが付いて回る。それも意図する内だといいのだけど、そうゆう感じでもないし。

淡々とした口調でさらりと怖いことを言うクラブオーナー役の中村獅童と、純愛を便所に流すシーンは好き。思いを寄せている女の子が売春していると分かった途端、女の子に対してあからさまな嫌悪感が湧き出ている態度と仕打ちを見て“セックスにお金を介在させると立ち位置がはっきりする”という「恋の罪」的な見方は、その通りだと思った。男はセックスにお金を介在させる女を下に見る傾向がある、と。女の子がグーをどう思っていたのかよく分からなかったので、あの仕打ちにも悲壮感が漂わず中途半端だった。

見所は女でも容赦なく殴るっていう、そんなところで男女平等な暴力描写でしょうか。
これ、監督の半自伝らしいです。下関って壮絶なところなんですね。
靜