NAOKI

ヒドゥンのNAOKIのレビュー・感想・評価

ヒドゥン(1987年製作の映画)
3.8
昔…おれの駐車場はアパートから少し離れたところにあって、夜中なんかに帰ってくると暗い夜道をとぼとぼ歩いて帰らなきゃならなかった…

その途中に潰れて空家になった元…工場があって、その前に錆びた機械や資材が雑然と放置されているのだが…その脇を通るとき何かがゴソリと動いた💦

驚いて身構えた…暗くてよく見えないが壊れた機械の脇に人が座り込んでるみたいだった…
(酔っぱらいか…)
一旦はそのまま通りすぎた…しかしけっこう寒い季節である…そのうえその夜はどんより曇っていて未明から雨が降るような予報だった。
「ええぃ…めんどくせーな💦」

おれはさっきの工場の前まで引き返した。
やはり中年の男のようだった…
「おいさん…大丈夫かい?こんなとこで寝たら風邪引くよ…」
するとおっさんの口が動いたのだが…それは声というより変な音で…しかし明らかに何かの言語のようなのだが…おれは何故かゾクリとした。
直感的に地球上で使われている言語ではないような感じがしたからだ…

しかし当然おれは地球上で使われている言語を全部知ってるわけでもなく…バカなことを…すぐに考えを打ち消してもう一度声をかけた…
「おいさん、家は近く?」
「だだだだ大丈夫…はい!」
ほうら…只の酔っぱらいだ。
「たちてたちて…あーはい!」
何言ってるのかよく分からない💦
(外国人か?)そう思った。
「おいさん…大丈夫?家帰った方がいいよ…雨になりそうだし…」
「あたあたあなた?私を懸念か?ダイジョブダイジ」
「ほら、手を貸すから家に返ろう」
おっさんの腕を取り、立たせた時、またぎょっとした…おっさんのズボンの生地を通して感じる足の感触が硬質のプラスチックか金属みたいに固かったのだ…(義足か?)たぶんそうだろう…
「おいさん!家は近く?」
「ここに…ここに…はいよ!」

「ここって工場じゃんよ…ダメだよ勝手に入れないし…」
「懸念か?ダイジダイジ…いい!ありがと!」
時折、急に発音が明瞭になって、壊れたロボットと話してるみたいだった💦

(ひょっとしてホームレスか?)
ポツリポツリと雨も落ちてきた…おれは面倒になってきておっさんを支えながら廃工場の中に入った。
てっきり酒臭いか汗臭いだろうと覚悟していたが、おっさんの体からは焚き火の後みたいな芳ばしい香りがして不思議な気がした。

廃工場の中は何かのオイルのような臭いが充満していて静かだった。
「あなたは…たは…ご配慮…われ宇宙からの…はい!」

おれは怖くなってきた…ちょっとおかしい人かも知れない…とりあえずここなら雨風しのげるし…もう帰ろう…

「…たは親切。どうせ今から帰る…ありがたい…ありがたい」
急にはっきりとそう言った…どうやら感謝されてるみたいだし…もういいか…
「おいさん、雨やんだら…ちゃんとうち帰るんだよ!」

おれはどしゃ降りの中を走ってアパートまで帰った。
その夜は嵐のような暴風雨になった。

「ヒドゥン」
もう30年前の映画なんですね💦人間社会に入り込んだエイリアンとそれを追うもの…もはや亜流が山程作られて、今観ると安っぽく見えるかも知れないが当時はビックリするほどフレッシュで面白い映画だった。

エイリアンに寄生されると享楽的に素行が悪くなり、宿主をちっとも大事にしないから人間はゲボゲボ壊れていく💦
新鮮な面白さでした。
後半の展開は意外と切なくて感動までさせられて😁💦当時もボディスナッチャーのパクリB級映画扱いでしたけどおれたちのようなボンクラSF映画ファンからは絶賛された作品でした😁💦

次の日の朝…嵐は過ぎ去り空は晴れ渡っていた。
おれは昨夜のおっさんのことを考えていた。

「宇宙」なんて言うから気味悪くなったけど、エイリアンとかフォリナーには異邦人とか外国人の意味があってそれが宇宙人とも訳されたりする。だから日本語があやしい外国人が間違って宇宙人と口走ったりしても不思議はない。おれは苦笑いしながらおっさん…ちゃんと家に帰れたかな?と考えていた。

携帯が鳴った…後輩からだ。
「先輩…大丈夫でした?そこら辺大変みたいっすよ」
聞くと夕べの嵐でこの辺りで局地的な竜巻が発生したらしく被害が出たらしい。

電柱が2本倒れて廃工場の屋根が飛んだらしい。
「あの工場だ!」
おっさん…
どうやらケガ人は出てないらしい。
「おっさんの宇宙船があの工場に隠してあって…昨夜嵐に紛れて飛び立ったんだな」
おれは自分の妄想が気に入って
鼻唄を歌いながらコーヒーをいれながらテレビを付けてニュースをチェックしていて唖然とした。

となりの市で暴風雨が過ぎた朝方…複数の人が西の空へ飛んでいく火の玉を目撃した…というのだ。

ニュースは隕石が大気圏に突入した際、燃え尽きる時に起こる「火球現象」の可能性が高いと報じていた。
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