茜

ボクシング・ヘレナの茜のレビュー・感想・評価

ボクシング・ヘレナ(1993年製作の映画)
5.0
これ(色んな意味で)めっっっちゃくちゃ面白い。
こんなに一人で声出して爆笑しながら観た映画久々で嬉しかったわ。
今年観た映画で一番好きかもしれん。

デヴィッド・リンチの娘さん、ジェニファー・チェンバース・リンチ監督のデビュー作。
母親の愛情を一切受ける事なく育った外科医のニックは、優しく綺麗な彼女が居ながらも、童貞卒業相手の高慢糞ビッチ・ヘレナの事がずっと忘れられない。
ある時、ニックの目の前でヘレナが自動車事故に遭い両足をはねられてしまう。
ニックはそのまま彼女を自宅に運び込み、両足を切断して監禁してしまう。

四肢切断モノですが、そういうグロいシーンは一切ないし、切断した手足すらもモロには映りません。
そんなものを期待しなくても、この映画は違うベクトルでめちゃくちゃ面白いのです。
多分ジェニファー監督ってめちゃくちゃド天然なんじゃないかなぁ~。

とにかくBGMの選曲やスローモーションの使い方など、いちいちセンスがくっっっそダサい。
公開当時の90年代でも浮いてそうな、もはや何年前のメロドラマだってレベルでダサい。
水浴びするヘレナをスローモーションで映しながら照れ臭くなるぐらいムーディーな曲を流したり、男とエッチしてるヘレナを覗き見して泣き喚きながら走るニックに合わせて昭和の日本映画みたいなドンドコ曲流したり…。
文章で上手く表現出来ないんですけど、とにかく映像と音楽のセンスがポンコツ過ぎて何回声出して爆笑したか分かんない、すっげえ笑える。

面白いのは映像と音楽センスだけじゃなくて、ストーリーまで訳分かんないんだからもうレベルが違う。
好きな女の手足を切断して監禁するまではまぁ分かるんですけど、その後の展開もだいぶエキセントリックなんですよ…。
つらつら書きたいけどキリがないから実際観て下さい…私にはこのぶっ飛び加減が文字で上手く伝えられない。
そして絶賛大不評なオチには私も流石に気が抜けたけど、よくある大人の事情的な何かのような気がしなくもないがどうなんだろ。
まぁ私はこのオチすらも愛すべきポンコツ要素として評価しますけどね!

ちゃんと真面目な感想も残しておくと…
私的にはニックとヘレナのサイコラブストーリーというよりは、ニックと母親の関係性についての話という印象が強かったです。
優しく綺麗な彼女がいるのに何故ヘレナみたいな高慢糞ビッチがいいの?っていうのは只の一般論で、ニックは糞ビッチだった母親に対する満たされなかった愛情を同じく糞ビッチなヘレナにぶつけているだけなんですよね多分。
そう考えると結局ニックが本当に愛してるのって母親なんだと思うし、何かヘレナの存在が虚しく思えてきたりもする。

とりあえず私は超おとぼけなジェニファー監督が大好きになりました。
真ん中ハゲで両サイドふさふさっていう漫画みたいな髪型のおっさんも出てくるよ。
茜