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戦火の馬のYYamadaのレビュー・感想・評価

戦火の馬(2011年製作の映画)
4.0
【監督スティーブン・スピルバーグ】
第27回監督作品
◆ジャンル:  
 人間ドラマ
 
〈見処〉
①近代戦争の分岐点、
「第一次世界大戦」を描いた傑作
・『戦火の馬』(原題:War Horse)は、1982年に出版されたマイケル・モーパーゴの児童小説を原作とする、2011年に公開された人間ドラマ作品。
・スティーヴン・スピルバーグの第27回監督作品であり、『ブリジット・ジョーンズの日記』『アバウトタイム』のリチャード・カーティスが脚本を手掛けている。
・舞台は20世紀初頭のイギリス・デヴォン。貧しい農家にありながら、父が大金にて落札してきた、元気な茶色のサラブレッドに対して、アルバートは「ジョーイ」と名付け、その世話を一手に引き受ける。
・なかなか懐かないジョーイであったが、
アルバートは畑を耕すことができるようになるまで調教を行い、次第に信頼関係を築いていく。
・しかしながら、悪天候により作物を失っはた父親は、金策のためジョーイを軍人ニコルズ大尉に売却。軍馬としてドイツ軍との最前線に立たされるジョーイと、のちに自ら軍に志願することになるアルバート。厚い絆で結ばれた彼らの運命は再び交差するのか…
・本作は、映画化作品は少ないながら、有史以来最大の戦死者を出したと云われる第一次世界大戦の戦火の下、イギリス/ドイツ両軍それぞれに人間本来の優しさが垣間見える、傑作ドラマである。

②『E.T.』+『プライベートライアン』
・多くのスピルバーグ作品に特徴的に見ることが出来る「異形との愛情と冒険心」と「リアルな社会描写と残酷性」の代表作といえば、それぞれ『E.T.』(1982)と『プライベート・ライアン』(1993)が挙げられる。
・過去作品では、その両面の要素を持つ融合作は見当たらなかったが、当時65歳のスピルバーグが演出した本作は、双方を引き継ぐ素晴らしい作品となっている。
・「異形との愛情と冒険心」は、序盤のアルバートとジョーイによる雨中の開墾シーン、終盤の再開シーンが、鑑賞者の胸を熱くする。
・また「リアルな社会描写と残酷性」においても、戦死者が続出するアルバートの初陣、戦場を闊歩するジョーイのシーンは迫力満点である。

③ ディズニーとスピルバーグ
完全な余談でありますが…
・スピルバーグ監督前作『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』から僅か4日後となる2011年12月25日に全米公開された本作の配給会社は、ディズニー傘下の大人向けレーベルである「タッチストーン・ピクチャーズ」。
・今まで接点のなかったディズニーとスピルバーグが結び付いたきっかけは、2008年10月にスピルバーグが出資する「ドリームワークス」がパラマウントから独立することになったこと。
・当時はスピルバーグの「古巣」ユニバーサル・ピクチャーズが配給を請け負うことが発表されたが、スピルバーグ個人とユニバーサルが1987年に締結した、ユニバーサル・スタジオの開発コンサルタント契約とライセンス料(同園の収入の2%)の見直しをユニバーサル側が迫ったことから破談。スピルバーグは、テーマ・パーク分野でもユニバーサルとライバル関係にあるディズニーと配給契約を提携。
・結局は、ディズニーと天秤をかけられたユニバーサルは、スピルバーグと2009年に2017年までのコンサル契約を延長。その条件はユニバーサルのテーマパーク総収益の5.25%をスピルバーグが得るものであるという。感動大作の本作の裏側では、随分と大人の事情があったようだ。

③結び…本作の見処は?
○: ジョーイとアルバートの関係性に胸を熱くしない人はいない。
○: ジョーイを取り巻く戦場で出会った多くの人々に善人が多く印象的。イギリス軍の主力には「ロキ」と「ドクターストレンジ」も共演。
○: CGにて描かれた『タンタンの冒険』の愛犬よりも、表情豊かな本作のジョーイのほうが、演出でも見所は多い。ほとんどCGをつかわず、11頭の馬の「共作」としてジョーイを演じたそうだ。
○: ヤヌス・カミングスキーによる陰影が印象的な映像美が素晴らしい。とくにラストシーンは、西部劇さながらのドラマティックな描写は見逃せない。
○:「騎馬戦」が主力となる、最後の近代戦争。『プライベート・ライアン』との時代の違いが明らかである。
▲: 上映時間が長い!!
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