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別離のkuuのレビュー・感想・評価

別離(2011年製作の映画)
4.0
『別離』
原題Jodaeiye Nader az Simin.
映倫区分G.
製作年2011年。上映時間123分。

離婚の危機を迎える夫婦、つなぎとめようとする娘、そして、彼らの問題に巻き込まれていくもう一つの家族。すべては愛する人のために、守るべきもののために。
それぞれが抱える“秘密や嘘"、胸の奥にしまわれた“真実"が複雑に絡み合い、彼らの人生を翻弄していくイラン産作品。

テヘランで暮らす妻シミンは、11歳になる娘テルメーの将来のことを考えて、夫ナデルとともにイランを出る準備をしていた。
しかしナデルは、アルツハイマー病を抱えることとなった父を置き去りにはできないと国を出ることに反対。
夫婦の意見は平行線をたどり、シミンが裁判所に離婚申請をするが、協議は物別れに終わる。
シミンはしばらく家を出ることとなり、ナデルは父の世話のためにラジエーという女性を雇うことにした。
しかし、ある日、ナデルが帰宅すると、父は意識不明でベッドから落ち床に伏せていた。 
ナデルは怒りをあらわにして、ラジエーを問い詰め、彼女を手荒く追い出してしまう。
その夜、ナデルは、ラジエーが入院したとの知らせを受ける。
しかも、彼女は流産したというのだった。。。

今作品は、宗教の真実性、階級の違い、法律、家族の名誉、私利私欲が入り乱れる迷路の中で、一群の人々が真実を探し求めるちゅう、巧みな性質を備えている。
その過程で、監督・脚本のアスガル・ファルハーディーは、政治的な戯言に頼ることなく、現在のイランが直面している問題を見事に暴き出していました。
彼のカメラワークは、小わっぱ役人の気まぐれに従わなければならない状況から、都合のいい時には自分の信念を妥協してしまう人々の様子まで、すべてを判断することなく記録している。キャストは一様に素晴らしかったです。
レイラ・ハタミは、娘のために移住を希望し、夫と別れる不機嫌な妻シミンを見事に演じている。
ペイマン・モアディは、アルツハイマー病の父ちゃんを見捨てることができず、国内に留まることを主張する夫ナデル役で、中流階級の高潔さを表現していた。
信心深いが貧しい女性で、ナデルの父ちゃんが仕事で留守の間、世話をすることに同意するラジエ役を演じたサレー・バヤトもまた佳かった。
シャハブ・ホセイニは、ラジエの失業中の夫で、債権者に返済するための現金を手に入れなければ刑務所に行くことになるホッジャットを演じている。サリナ・ファルハディは、ナダーとシミンの若い理想主義的な娘テルミー。過去に忠実な父ちゃんと、新しい人生を歩もうとする母ちゃんの間で揺れ動くテルメは、今日のイランが抱える問題でもある。現代性を完全に排除するのではなく、いかにして過去の良さを残すか。
今作品は、ある程度、我々の一部が無知であるかもしれない場所で、司法制度がどのように機能しているかを教えてくれる。
我々のやり方が、彼らのやり方より優れているとか、その逆とかではなく、あることがどのように行われているかと云うことです。
今作品は、単に離婚や二人の個人の別離を描いているわけではなく、見たままに始まり、見たままに終わりますが、その間に起こることは、どちらかというとスピンオフの物語というか、主人公のナデルとシミンが同じ考えでなくなったことに起因してる。
今作品は、メチャセリフが多く、キャラが立っている物語で、俳優たちは皆素晴らしかった。
特に主演のレイラ・ハタミは、フォトジェニック(今風なら映える)な美しさを持っていて、目が離せま1000でした。
ナデルとシミンが娘を連れている一方で、ホッジャトとラズーエが小さな可愛い娘を連れています。
シミンが夫との離婚を考えて結婚生活を中断しているため、ナダールはアルツハイマーを患う父ちゃんの介護のためにラジエを雇うことになる。
ある事件が起こり、それが法廷劇へと発展していくんですが、実は別の事件やカードがあり、それをアスガー・ファルハディが物語の後半で見せるときまで隠してる憎いね。
すべてが進行し、最終的に解明されていく様子に、興味をそそられました。また、今作品に嵌まった大きな理由は、離婚や申し立てに関するイランの法律や伝統が描かれていることかな。何が殺人とみなされるのか、クルーアン(コーラン)に誓う姿を見ることがどれだけ重要なんか、裁判官が反対するアリバイにどう対処するのか。
どこまで正確かはわからへんけど、興味深いことに他ならなかったっすね。その公正さについて、見た人たちの間で議論や討論が起こることは間違いないかな。
そして、物語はそれらの問題を経て、シミンとナデルとの別離まで一巡して戻ってくる。
ホンマ夢中になれた映画でした。
kuu

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