YYamada

別離のYYamadaのレビュー・感想・評価

別離(2011年製作の映画)
3.7
【法廷映画のススメ】
『別離』(2011年)〈フィクション〉

佳作!傑作!【外国映画のススメ】
◆製作国: 🇮🇷 イラン
◆受賞歴:
・第61回ベルリン国際映画祭
 金熊賞(最高賞), 銀熊賞(男優賞/女優賞)
・第84回米アカデミー賞 / 外国語映画賞
・第37回セザール賞 / 外国語映画賞

◆法廷の争点
1) 交錯を働いた夫は、家政婦の妊娠を
 事前に認識していたか?
2) 子供の親権の帰属は?

〈見処〉
①世界中の映画賞を席捲!
 イラン発の重厚な人間ドラマの傑作
・『別離』(英原題:「Nader and Simin,A Separation」=「ナデルとシミンの別れ」)は、2011年製作のイラン映画。
・本作の舞台はイランの首都、テヘラン。11歳の娘テルメーを持つ中流階級のナデルとシミンは離婚の淵に立たされていた。妻シミンは国外転出を希望し、家庭裁判所に離婚許可を申請するが認められず、夫の許を離れてしまう。
・残された夫ナデルは認知症の父を思い、貧しい人妻ラジエーを家政婦として雇ったが、ある日、ラジエーによるナデルの父への対応に激昂したナデルは、ラジエーを玄関から押し出し、彼女の流産を招く。
・ラジエーとその夫ホッジャトはナデルは、胎児を死に至らせたナデルを訴えを起こし、もうひとつの裁判が始まる…。
・本作は、離婚の危機を迎えた夫婦を軸に、両親をつなぎとめようとする娘や、もうひとつの夫婦の物語が絡み合い、複雑な人間模様を描いた外国映画の傑作である。

②不幸のミルフィーユ
本作では、イスラム圏特有な小さな制約や、登場人物たちの小さなウソが塗り重なり、多層的な不幸を招いていく。

・女性の社会進出の制限
・中流・下流階級の間にも存在する
 確かな社会格差
・認知症の父の介護
・イスラム教の禁制
・離婚による子の親権の争い
・夫による家庭内暴力
・容疑者の娘に対するイジメ

③結び…本作の見処は?
「和をもって尊しとなす」日本人の感覚と異なる価値観が垣間見れる。
○: 2つの争いの帰着について鑑賞者の解釈に委ねた作風。賛否両論はあろうが、作品に余韻を遺すその構成に、世界中の映画賞を総ナメに出来た答えがある。
○: 作中に仕掛けられる小さな伏線が終盤に結びついていく、よく出来た脚本。
▲: 夫婦2組・計4人の主要人物それぞれが大なり小なりの失敗をしているが、自己犠牲の精神のない彼らの行動が、結果として自己犠牲に苛まれていく。不幸に同情こそすれ、共感は出来ない。
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