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ある機関助士の一のレビュー・感想・評価

ある機関助士(1963年製作の映画)
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国鉄のPR映画であり土本典昭のデビュー作。どこをとっても撮影・編集がかなりあざとい。機関士の日常をすごくサスペンスフルに切り取っていて興奮させられる。線路の切換してたおっちゃんの声がよかった。おなじく国鉄全面協力の鉄道映画『大いなる驀進』観返したくなるなー。

2021/3/7
『留学生チュアスイリン』(土本典昭)
反政府活動をしたとして祖国マレーシアによって留学生資格を剥奪されたチュア・スイ・リンさんの闘いの記録。日本の文部省は国費支給を打ちきり、彼が在籍する千葉大学も言われるままに除籍処分を下す。チュアさんは文部省相手に裁判を起こし、千葉大に処分取消を求めていく。この映画が素晴らしいのは、初めは悲観的に見えた彼の闘いが、彼を支援する運動の伝播・拡大によって、(一応の)勝利という結果を得るまでを、被写体に付き添い状況に身を委ねながら、すごくドラマチックに映しているところだ。政治的な映画ではあるけれど、理不尽な理由で苦しい目に遭っている人間が身近にいると知ったときに周りの人間がどうリアクションをしたのかという普遍的な話であって、反権力とかそういうイデオロギー臭さがない。それでも、チュアさんの表情がとても魅力的なのとは対照的に、学長はじめ偉そうにふんぞり返ってるやつの悪辣な態度が自然と際立つ。ホントこの映画みんなに観せたほうがいい。集会で中国人留学生が音頭をとってインターナショナルをそれぞれの言語で合唱するシーンよかったなー。
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