ゴト

江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間のゴトのレビュー・感想・評価

3.7
親や家庭は選べないし、産まれた環境や自分の身体も選べない。

ならば、普通とそうでないものの境は運によって分けられるということなのか。そんな不確かなもので決まってしまう普通とは一体何なんだろうか。

土方巽演じる丈五郎は家督を継いでいるようだが、名家に望まれない子が産まれた場合はそのまま間引きさせるか、人目に触れぬように牢に入れていたというのが勝手なイメージである。それがもし、生き延びて財力を手にし、社会に対して激しい憤りを感じていたら、この映画のようなことになっていたかもしれない。

「女優霊」「リング」等のいわゆるジャパニーズホラー以前の映画なので、見た目の気味悪さだけに頼った恐怖演出が目立つ。

まあ、それで出てくるのが幽霊だったら「お化けって気持ち悪いね」で済むかもしれないが、人間はそうはいかない。冒頭、裸の女×精神病院の合わせ技で観る者の差別意識を揺り起こし、後半の奇形人間の登場で価値観を揺さぶってくる。

丈五郎は、妻の裏切りを自分が奇形だからなのだと思ったのだろう。それに対するある種の復讐が普通の人間を奇形に変えてしまうというものなのだが、普通と普通でないその境は簡単に飛び越えられてしまうくらいのものでしかないのかもしれない。

あと、ちょっと怖いなと思ったのが奇形人間と人工的にシャム双生児のようにされていた秀子を主人公の広介が手術で助けるシーン。分離手術は上手くいったみたいだけど秀子にくっついていた奇形の男はどこに行ったのだろう?あの後出てきたっけ?見落としてるだけかもしれないけど、もしかして処分された?んなわけないか。
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