ボブおじさん

チャンピオンのボブおじさんのレビュー・感想・評価

チャンピオン(1949年製作の映画)
3.7
フェザー級の世界チャンピオンだったバリー・マクガギンはどうしてボクサーになったのかと聞かれてこう答えた〝俺は詩人にはなれない。自分を語るにはこのやり方しか知らないんだ〟。

何の恨みも持たない赤の他人を完膚なきまでに打ちのめすには、物語が必要だ。だからボクサーの人生は、映画になりやすい。その物語と自分とを合わせて人はリング上の拳の狂宴に酔いしれる。

ボクシングの手ほどきを受け、金を稼ぐためリングに立つ一人の青年が、八百長試合を乗り越え、やがて肉親や情婦を踏み台にしてチャンピオンへとのし上がっていく。

このボクシング映画の古典の中にもカーク・ダグラス演じるアイルランド人ボクサーの物語が詰まっている。実際の彼もロシア系移民の子で、生活の為ボクサーとしてリングに上がった経験を持つ。

兄弟の一体と確執。そしてボクサーとして生きることの孤独。それらを払拭する為に彼はリングの上で闘う。ラストのブロンド女の眼差しも含め、それまでのハリウッド映画に見られなかったようなアンチ・ヒーロー像が鮮烈な印象を残す。




〈余談ですが〉
今では、マイケル・ダグラスの父親と紹介されることも多いカーク・ダグラスだが、彼の作品を多く見てるとマイケル・ダグラスがあのカーク・ダグラスの息子なんだと言いたくなる。

まぁ、本人たちはどちらでもいいんだろうけど😅