KANIO

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズのKANIOのレビュー・感想・評価

5.0
クレヨンしんちゃん映画の中でも屈指の大名作。
映画の世界に引きずり込まれたしんちゃん達が、消えゆく記憶や悪の知事達と戦いつつ、西部劇の世界から脱出しようと奮闘するお話。

年代的に、観ている子供達に解るワケないのに所々の登場人物や声優から見える『荒野の七人』オマージュが笑える。

ギャグ路線寄りな他作品とは違い非常にシリアスな作風となっており、しんちゃんの映画には珍しく非人道的な悪役が目立つ。銃は撃つわ、児童に鞭を叩き付けるわ、人を馬で引きずるわ、暴力描写がとにかく多いのが衝撃的。

「本当にこの世界出られるのか」とか「消えていく記憶を再び取り戻せるのか」とか、観ている側にも終始緊張感がテンポ良く伝わってくる。

きっと誰もが子どもの時、夢の中で「現実の誰でもない異性」に恋したことはあるだろう。しかし、それが夢だと分かった途端に何とも言えない喪失感に苛まれる。
また大人になるにつれて、色々な記憶を知らずの内に忘れていく。時に大切な事だったり、時にどうでもいい事だったり、でもそれらをふとした事から思い出したり。
そういった喪失と獲得を繰り返して子供は大人になっていく。
子供達に対する強いメッセージと大人達に対する想起のメッセージ、これらを「西部劇」「映画」「喪失」の3つのキーワードを使い、巧みに映画として描き出した大傑作。
前に進んだ先には必ず終わりがある。
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