140字プロレス鶴見辰吾ジラ

東京ゴッドファーザーズの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

東京ゴッドファーザーズ(2003年製作の映画)
3.8
台風の日に映画何本?⑥

【奇跡も魔法もあるんだよ】

今敏監督シリーズはこれで制覇。東京に暮らすホームレス3人が聖夜に赤ん坊を見つけて親探しに奔走する話。今敏監督の持ち味の虚実混合のシームレスな繋ぎは本作ではないのだが、ホームレスと社会という上下で隔てられたコミュニティを混合させ、三者三様に紡がれていた過去と赤ん坊を拾ったことで結束した今を奇想天外な物語として描き、ミニマルに纏めている。

最初はホームレスとして社会から締め出されたり、隔絶を選んだりする家出少女だったりと、壁の内と外のような感覚は与えつつも、赤ん坊の親の手掛かりとそれを追う中での運命的巡り合わせを面白おかしくして、やはり社会の底辺として不条理な暴行や医療施設利用に際しての痛みも見せている。序盤→中盤→終盤と暖かみ→冷たさ→そして暖かみと繰り返しながら、クライマックスの今敏作品らしい追想劇をミステリーのひっくり返し演出も含め怒濤のアクションでさーびすしてのブーストで、現実の冷たさを温める奇跡や魔法のような救いの手を差し伸べてくれるのが何より嬉しさをもって去来する。

赤ん坊という人生のスタートを人生をリタイア仕掛けた者たちの温かさによって、ホームレスと社会の精神的壁が取り払われるラストとオチをつける落語要素も含めハートフルな作品。


今回の映画1日何本?企画は台風の中、停電等恐怖もある中で6本でフィニッシュ。低気圧で頭が痛いのでここでお休み。