黒澤明監督作品 第1作目
「姿三四郎」1943年
黒澤明監督の作品は全部で30作品もある。
10年以上前の時点で観終えたので、各作品の記憶も朧げなことがある。
でも自宅には黒澤作品の全作DVDがあるのでたまに見直すこともある。だいぶ昔に一気にコレクションを買って確か10万円以上した気がする。今は絶対に許されない所業😭Blu-ray欲しいけど、、
この第1作から既に黒澤明監督らしい快作となっていて非常に面白い。
一言で言うと柔道版「宮本武蔵」。
語り口が吉川英治の小説「宮本武蔵」を読んでいるかのよう。
私の母方の祖父はもう亡くなっているが、若い頃、吉川英治の書生をしていたそうだ。作家を目指していたのだ。
ただ、かなりいいとこ育ちの祖母と結婚する条件が医者になることで作家を諦め、生涯を医者として生きた。小さい頃、祖父の家に遊びに行くと、でかい屋敷の玄関に子供の私より遥かに大きい真っ黒なグレートデンが2匹鎮座していて怖くて近寄れなかった。そして奥の床の間で袴を着て、眼光鋭く真剣で居合をしていた😭 優しかったけど、正直祖父には怖い印象しかない 笑
話は戻るが、姿三四郎はわかりやすい。冒頭から滅茶苦茶強いラストの悪役が街で次々となぎ倒す。
一方、若くやんちゃな三四郎が道場で頭角を表す。師匠はまるで沢庵和尚のような禅道を説く。途中、ベテラン無敵の志村喬扮するベテラン柔道家に何度も投げられても、翻り倒れず、勝つ。
三四郎は藤田晋。どこかとぼけている感じで滑稽さがあり、全編ユーモアが漂う。
そしてラストは後の黒澤作品を彷彿とさせる広い野原で最強の悪役との決闘。これがダイナミック!強い風ですすきが揺れる中、2人は縦横無尽に駆け巡る。面白い。
ただこの作品が印象深いのは、例の沢庵師匠が強くなった三四郎に最後まで禅の問答を説き続ける。ただ強いだけでなく人の道を説き、三四郎は理解できず自分の勇ましさを証明しようと池に飛び込んで一晩冷たい池に浸かる。明け方に三四郎の前で一輪の蓮の花が咲き、朝露の中で揺れている。それを見ているうちに涙が流れて、人間の価値は強さだけでないと三四郎は悟る。
静寂と間や緩急を使った美しくもダイナミックな格闘シーンと三四郎の心の成長をヒューマニスティックに描いた作品で普遍的なテーマと面白さに満ちている。
これが監督1作目ですか、凄いっすね 笑
すでに黒澤明の志が貫かれたような作品。
さすが日本映画史最大の巨匠は違います✨