千年女優

トムボーイの千年女優のレビュー・感想・評価

トムボーイ(2011年製作の映画)
4.5
家族で新居となるパリの団地へ引っ越した10歳の髪を短く整えた少女で、近所に住む少女のリザに尋ねられた際に思わず「ミカエル」と男性名を名乗ったロール。それ以来子供たちの間では男の子と認知される彼女が、サッカーや水遊びを通じてリザとの親交を深めるも間もなく訪れる新学期を前に不安を募らせるひと夏を描いた青春映画です。

自身もレズビアンであることから女性の性的アイデンティティをテーマにして後に『燃ゆる女の肖像』でクィア・パルムを受賞したセリーヌ・シアマが手掛けた2011年公開の作品で、自らの子供時代に着想を得た物語が高く評価されてクィア映画を対象とするベルリン国際映画祭のテディ賞審査員賞を受賞するなどしてキャリアの礎としました。

センシティブな主題を押し付けることなく、トランスジェンダーまたはヘテロセクシュアル、あるいは子供期の気まぐれのいずれとでも捉えられる繊細なバランスを貫きながら、それでも「嘘」を巡る物語として一貫した主人公の目線で緊張感を絶やしません。作劇や演出の細やかなところまで型にはめないことを徹底している温かい一作です。
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