Jeffrey

レ・ミゼラブルのJeffreyのレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(1957年製作の映画)
3.0
「レ・ミゼラブル」(1957年版)

冒頭、複数の静止画。ジャン・ヴァルジャンはパンを盗み捕まる。それから時は立ち、娼婦の女、養女の女、青年マリウス、犯罪者、子供、司教、社会の底辺を生きる人々。今、20年に渡る壮大な物語が幕を開ける…本作はジャン=ポール・ル・シャノワ監督による1958年版の仏、伊合作映画で、この度DVDを購入して初鑑賞したのだが素晴らしい。上映時間189分の全2部作の超大作で、ヴィクトル・ユゴーの名著をフランスの名優ジャン・ギャバン主演で完全映画化した作品で、2012年にはアマンダ・セイフライトやヒュー・ジャックマン主演でリメイクもなされている(本作は複数リメイク版がある)。

この作品は一般的に数ある映画化作品の中でも最高傑作との評価が高く、壮大なスケールで描かれる文芸大作としては非常に素晴らしいものと言われているようだ。昔からみたかったのだが、レンタルとかもなかなかされておらず、少し前まで廃盤だったが今回また再発してくれたので購入してやっと見れた。一斤のパンを盗んだがために前科者となったジャン・バルジャンの過酷な運命に翻弄されながらも、彼はまっすぐに生きようともがく姿を通して、様々な人間を映す名作である。

本作は冒頭に静止画が複数枚写し出されるオープニングで始まる。そして無知と悲惨のある限り本書も無益ではあるまいとユゴーの言葉が写し出される。

さて、物語はあまりに飢えていた主人公のジャン・ヴァルジャンはパンを盗んでしまった為に刑期が終わるまで牢屋にぶち込まれていた。社会復帰をした彼は温かく迎えてくれた司教から銀の食器を盗んで逃亡してしまう。ところが、すぐに警官に捕まって司教の所へ連行されるが、彼は他にもあげた物を忘れていってるぞと彼に伝え、警察たちにジャンを釈放させるように頼む。それを機に彼は改心をして社会の底辺で苦しむ人々を助けるために力を尽くそうと決意する話なんだけど、そこから20年近くにわたって物語が続くため、あらゆる登場人物が出てくる。娼婦の女や養女の女、青年マリウス、犯罪者のテナルディエといった個性的なキャラが見事な伏線を作っている。

これはポイントの1つで、そういった連続性の物語が展開していくのだ。原作は読んだことないが、かなり複雑なんだろうなとこの時点で感じ取れるし、膨大な原作を凝縮したシナリオのスマートさはさすがである。

いやー、3時間もある映画なのでなかなか万全のコンディションで観ないといけないと思い、体調整えて鑑賞したが圧倒的ドラマだった。だけど少しばかり突っ込みどころがある映画でもある。そのツッコミどころはあえて言わないから、映画を見ればおのずと分かるかもしれない。この作品は古典映画としての水準は高いと思うのはわかるのだが、ただ個人のタイプとしては普通かな。

それでもワーテルローの戦い1832年の今日は共和派のパリ蜂起を描くスペクタクル性が所々にあって歴史を感じ取れる。特にヒューマニズムが全面的に出ていて、波瀾万丈の人生と言うのはこういう風に描くのかとお手本的で、テクニカルカラー画面とともに感じれる高名な1本である事は確かだ。

そもそも本作のように貧困に喘ぐ人々をフォーカスして半ば主人公として描いている作品は好きで、原作者もナポレオン3世の独裁が続くフランスに帰ることができなくてイギリス領の島で亡命生活を送っていると言う過去があるので、そういったところを焦点に当てた感じもしなくはない。とにもかくにも壮大である。もともと5時間を超えている映画を短縮して3時間の2部構成にしていて、これほどまでに完璧な編集で終わらせているのはびっくりする。5時間版の映画はどのようなシークエンスがあるのか気になるところだが、見ることがかなわないだろう。
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