むるそー

宗方姉妹のむるそーのレビュー・感想・評価

宗方姉妹(1950年製作の映画)
4.5
伝統的な家父長制の中で生きる姉・節子(田中絹代)と、何にも縛られず奔放に生きる妹・満里子(高峰秀子)の対照的な姉妹を描いた作品。

ダメな夫の横暴にもただ耐えるだけの節子に対し、"お姉ちゃんは古い"と非難する満里子。そのとき節子が満里子に言った言葉が印象的だ。"新しいって何?わたしは古くならないものが新しいものだと思うのよ。"

僕が共感していたのは節子の夫・亮介。仕事も見つからず、家では妻と義妹に当たり散らして、妻の初恋の男性・宏に嫉妬する。そして宏からの資金援助を断り、妻に離婚を持ちかけ、逃げるように突然死する。救いようがない彼は太宰作品の男性像のよう。多分彼は自分に自信がなく、できた妻にあたるしかなくて、しかもそれにも妻は耐えるばかりで一向に自分を責めない。それがかえって彼自身の幼稚性を自覚することになって、自分の尊厳ばかりが崩れていく負の連鎖に陥っていたんだと思う。これが「桜桃」の主人公なら心中で愚痴りながら桃を不味そうに食べていたんだろうが彼はそのまま死んでしまった。それが彼にとって良い結末だったのか、そうではなかったのか、僕には分からない。
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