千年女優

モーリスの千年女優のレビュー・感想・評価

モーリス(1987年製作の映画)
4.0
まだ同性愛が法律で規制されていた20世紀初頭のイギリス。少年時代に抱いた男性と添い遂げる願望を胸に秘めたままケンブリッジ大学に入学した男子学生で、聡明な同級生クライヴと出逢ったモーリス。互いに恋愛感情を抱きながらもクライヴの高潔さから一線を越えずにいる二人が、やがて反発から傷つけあう様を描いた青春恋愛映画です。

戦前から活躍してメリット勲章を授与されたイギリスの文豪E・M・フォースターの同名小説を、後に『君の名前で僕を呼んで』でアカデミー賞脚色賞を受賞するジェームズ・アイヴォリーの監督で映画化した1987年公開の作品で、ジェームズ・ウィルビーとヒュー・グラントが識者に評価されてヴェネチア映画祭では銀獅子賞を獲得しました。

エイズ恐れられる時代に制作された挑戦的なクィア映画ですが、原作が1900年代前半の小説とあって直接的描写は控えてじっくりと進みます。哲学を交える文学的な物語は少々ダイナミズムに欠けるものの対称的な二人を通してマイノリティが強いられる「我慢」を高潔やプラトニックのような耳触りのよい言葉でごまかすことを拒む一作です。
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