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JLG/自画像のKのレビュー・感想・評価

JLG/自画像(1995年製作の映画)
4.9
自分自身を写す(映す)とき、そこには2人のじぶんが存在する。写される方と写す方。

原題は『JLG/JLG Autoportrait de decembre』。”JLG/JLG”、ジャン=リュック・ゴダールがふたりいる。芸術家と批評家。

だからゴダールが自分自身を語るのではない。歴史もないし、計画もないし、反省もないし、自慢もないし、葛藤もない。エピソードもなければ、ストーリーもない。

断片的な何かを連続的につなげている。規則はなく例外しかない。アウトラインをなぞることで対象を浮き彫りにする。それが実像だと言うように。

ウィトゲンシュタインの確実性の問題を引用して、「両手はある?」と盲人に聞かれ、両手が見えたら確信するのか。なぜ自分の目が確かだと信じうるのか。むしろ確かめるべきは目ではないのか?

新しい芸術(価値観)に出会うと、過去の自分が死んだような気になる。その瞬間、ふたりの自分が存在する。本作で、またわたしはふたりになった。

そんなことは関係なく、テニスしているゴダールを観れるだけで価値のある作品だ。
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