彦次郎

マルタの鷹の彦次郎のレビュー・感想・評価

マルタの鷹(1941年製作の映画)
3.8
ミス・ワンダリーなる美女から妹を救ってほしいと依頼を受けるも相棒と標的を殺され警察からも疑われるサンフランシスコの私立探偵サム・スペードが真相を追うハードボイルドミステリー。原作はハードボイルド小説の祖というべきダシール・ハメット。ハメットが探偵をしていたこともあるためかコンチネンタル・オプ(別作の主役)やサム・スペードが単なる推理機械でないキャラクターとなっています。恐らくはミステリー史上のパラダイムシフトを起こしておこしており本作以降に血の通った私立探偵が輩出されることになります。ちなみにハメット作の『血の収穫』を日本版にしたのが黒澤明監督の『用心棒』であることから日本映画にも影響を与えていることがうかがえます。
そんな名作とされる本作ですが映画化に2度失敗。本作が決定版として世に知られています。その理由はいくつかあるでしょうが登場人物たちがハマり役(ガットマンやカイロが忘れ難い)であったためリメイクできなかったのでしょう。特に狡猾非情ながらも殺人犯はどんな立場の人でも逃さないという自身の中に正義を持つサム・スペードを演じたハンフリー・ボガートの存在(声というか喋り方も)が大きいものと思われます。
タイトルの『マルタの鷹』は本作のマクガフィンになっておりこれを巡りブリジット(ワンダリーの本名)、カイロ、ガットマンと配下のウィルマーの争奪戦はブリジットとの恋愛も含めてこちらも後のエンターテインメント作品に影響を及ぼしていますがスペードが交渉する場面については容赦なくて多分現代(2023年6月時点)でも斬新。つまりけっこう作品として尖っていてその辺りで好みが分かれそうではあります。個人的には会話で話を膨らませているので少し映像として物足りないと思いました。なら原作を読め(小生は未読)という話ですがやっぱりハンフリー・ボガートが良いんだよなぁ…なので小説を読んでもきっと本作が連想されそうです。「そいつは夢の素さ」とか台詞や生き様がまさにハードボイルド!
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