MoscatoBianco

湖中の女のMoscatoBiancoのレビュー・感想・評価

湖中の女(1946年製作の映画)
1.5
原作既読(清水俊二訳)。

この映画は失敗です。
ハードボイルド小説の映画化は難しいです。

ハードボイルド小説は推理小説ではありません。事件の真相解明ももちろんですが、ハードボイルド小説の魅力の半分くらいは主人公の言動のカッコよさにあります。
フィリップ・マーロウみたいにシリーズ化されるようなハードボイルド小説では、特段に主人公がカッコいいわけです。

その意味で、POV形式で主人公の姿が鏡でしか見えないこの映画は、ハードボイルド小説の魅力の半分くらいを最初っから捨てています。全然ダメです。
原作者のレイモンド・チャンドラーもPOV形式には反対だったそうです。そりゃそうです。

監督兼フィリップ・マーロウ役のロバート・モンゴメリーは、ハードボイルドを理解していません。
自身がフィリップ・マーロウのイメージに合わないと思ったから姿を隠したのかもしれませんが、だったらわざわざカメラに面と向かって事件の展開を説明したりしないでください。野暮です。
フィリップ・マーロウはそんなことをする人ではありません。

ということで姿は見えませんが声は聞こえます。ところがこの声もなんとも軽い。台詞も全然カッコよくないどころか、かなり嫌なヤツです。

てな感じで、ちょっと驚くほどカッコよくないフィリップ・マーロウの映画でした。
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