horahuki

シックス・センスのhorahukiのレビュー・感想・評価

シックス・センス(1999年製作の映画)
4.3
鳥肌ホラー映画100というムック本をご存知でしょうか。ホラー初心者向けに見るべきホラー映画を100本+α紹介してる本で、メジャーからマイナーまで幅広く紹介している良書です。

そんで何でそんなこと言い出したのかというと、やっとこさ本作で全100作MARK達成しました!これで「ただのホラー好き」から「ホラー映画初心者」にステップアップできたと言っても大丈夫でしょう!全部見てる人は沢山いると思いますが、一応今日の時点でフィルマで全作MARKしてるのは私だけのようです。一番乗り♫イェイ(*^^*)

本当は全作タグ付けしたいのですが、「作品の選考」自体にも書籍の価値があると思いますので控えます。。。前に洋泉社の公式サイトに掲載作品全部書いてたから大丈夫かな〜と思ったんだけど、今見たら鳥肌ホラー映画100のページなくなってるので、念のためタグ付けはやめときます。

そんで本作の話ですが、ご存知の通りシャマラン監督の出世作。今回レンタルDVDで見ましたが、結末は他言すんなって文章がしっかり冒頭で流れるという仕様は相変わらずですね。本作以降こういうのが流行ったような気がします。同じくハーレイくん主演の『ペイ・フォワード』を当時劇場で見たのですが、そのパンフか何かにも結末は他言すんな的な文言が書いてたように思います。

改めて見ると非常に巧妙に「秘密」を隠しているのがわかります。どんでん返し映画と言われる通り、それまで思い描いていたものをクライマックスでガラッと一変させるわけですが、キャラクターの行動・対応の中にAとB2つの異なる意味を込めるとともに、観客に対し先入観を植え付け、クライマックスまでずっとその行動の意味をAだと思わせ続ける。セリフ選びや少しの仕草全てがA・B双方の意味を損ねることなく違和感なく展開させていく絶妙な描写の数々と、観客にBという発想を封印し続ける手腕が素晴らしい。

本作は自身に与えられた役割に気づく物語であり、他者を救うことで自身が救われていく物語でもある。過去にひとりの少年を救えなかったマルコム。その贖罪の思いから、コール少年へと彼の「救い」の矛先が向く…。コール少年が自身の役割に気づき、その存在理由の自覚が彼の心だけでなく母の心をも牢獄から救い出す。その前向きな暖かさに感動しました。

コール少年が恐怖を感じた時に逃げ込む赤いテント。あれは母親の胎内だろうと思います。親の愛情を欲する気持ちだけでなく、その心的幼さ・未熟さの象徴でもあるわけですが、だからこそ彼が恐怖と立ち向かう時にテントが壊れるわけで、わざとらしいんだけど、印象的な演出であると思いました。このテントでの演出はジェームズワンが『死霊館エンフィールド事件』でオマージュを捧げてますね。

そして本作の面白いところは、ブルースウィリス演じるマルコムの「救い」の矛先がコール少年にのみ向いており、妻には全く向いていないこと。ここにもA・Bダブルミーニングの巧みさが顕れている。Aの意味のみを捉えるとマルコムがただの仕事人間であり、マルコムを避ける妻の態度もさもありなんといった印象を与えるのですが、Bが明らかになることで、彼の「救い」の矛先が妻に向いていないことこそが最大限の愛情を妻に捧げていたことの裏返しであることがわかる。「描かないことで描く」という非常に巧みな逆説的表現。シャマランすげぇわ。

ただ、そうは言っても仕事に重きを置きすぎたことによる後悔というのは感じるし、家庭における父親・夫の在り方というのは次作の『アンブレイカブル』に受け継がれていくわけです。

どんでん返しのイメージが非常に強い本作ですが、それは本作の魅力を底上げしてくれる材料に過ぎないのであり、ネタ一辺倒の薄い作品なんかでは決してない。コール少年の能力は、社会から除け者にされ孤独の牢獄に閉じ込められる要因となり得る様々な現実的欠点の暗喩であり、自身の欠点を受け入れ前向きに歩き出す力へと変える優しい物語なのです。だから、ネタがわかったとしても本作は変わらず面白い。

『ミスター・ガラス』ヒットしてるみたいだけど、今後シャマラン監督はどうすんのかな。またホラーを撮って欲しいです!
horahuki

horahuki