ミヒャエル・ハネケ監督自身による同作品のリメイク版。
両方観たけど、私はこっちの方が好きかなー。
湖畔の別荘へバカンスにやってきたごくごく普通の家族。
夫と子供が外でボートの手入れをしている中、一人の青年が「卵を分けてくれ」と別荘にやってくる。
夫人がその頼みを快諾してしまったことから、救いようのない惨劇がスタートして…。
暴力とは何なのかについて否応なく考えさせられる作品。
得体の知れない青年たちによる、目的不明の暴力はあまりにも不条理で、観る者にショックを与えます。
しかもこの映画の意地の悪いところは、明らかに画面の向こうの私達をおちょくるような演出を取り入れている点。
青年の一人はちょくちょくこちらに向けてウィンクを飛ばしてきたり、語りかけてきます。
悪者はやられるだろう、どこかで逆転するだろう、そんなご自己中心的で平和ボケしている私達の願いを皮肉るかのように、本作は視聴者をとことん不快にさせてくるのです。
いわゆるご都合主義が全く適用されない映画ということ。反則じみた行為、謎のリモコン巻き戻しのシーンなど、とんでもない。
なお、ハケネ監督はこの映画を「ハリウッド製スリラー映画のパロディ」だと言っています。
この映画は観ている人の心理をかき乱す映画ではありますが、実は暴力描写のほとんどはフレーム外で行われ、直接画面に映し出されることはありません。
その辺のハリウッド映画の主人公の方が、よっぽどひどい暴力行為をしています。
ラスト付近での青年の言葉 「虚構も現実のように見えれば、それは現実」。これこそが本作のメッセージで、これはつまり、私たち観客は映画の中で描かれる嘘の「暴力」を「現実」かのように捉えがちだ、と主張しているのです。
文明社会とは素晴らしいもので、本当の暴力は私達の目に触れないように見事に隠され、私達が目にするのは虚構の英雄的な暴力のみ。
圧倒的な暴力行為をドキュメンタリーチックに描くことで、あなた方が映画の中で楽しんでいる暴力って実はこういうものなのですが?って暗に示そうとしているのです。
ラストがハッピーエンドであればどんな暴力もありだと言わんばかりの映画業界と、正義という名の下で暴力をふりかざすような作品にカタルシスを感じる私たち。
そういった誤解への警鐘として、一石投じたかったんでしょうね。
人に薦められないけど、胸糞悪いけど、嫌いじゃない作品。メッセージ性も十分で、なかなか傑作だと思います。