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テルレスの青春のMTMYのレビュー・感想・評価

テルレスの青春(1966年製作の映画)
3.6
少年たちは限りなく美しく、そして残酷になる——

寄宿学校にやってきたテルレスは、同級生バイネベルクの金をバジーニが盗んだことを知る。学校にバラさないことを条件に、バジーニに完全な服従を契らせたバイネベルクと友人ライティング。テルレス自信もまた、そのバジーニへの服従関係にグルになっていった。次第にエスカレートする行為を前に、テルレスは悩み、ある考えを確信していく。
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『#ブリキの太鼓 』で狂気じみたような精神的にグロテスクな描写(血ベッチャリ系じゃなくて、精神が不快になる嫌さ)を刻みこんできたフォルカー・シュレンドルフ監督の長編デビュー作だそう。グレッグ・アラキの作品を手に取った時にたまたま目に入って「そういえばこれ…!」と思っていたのでちょうど良かったです。

ヒトラー政権下に禁書処分になったローベルト・ムージル原作「若きテルレスの混乱」の映画化になっていて、カンヌ映画祭国際批評家賞を受賞しているそうです。製作には #ルイマル も関わっていて、ヴィスコンティも製作を考えていたとか云々。
調べたら、原作では同性愛の要素もわりとあるらしいのですが映画では、そういう寄宿舎舞台あるある(?)はほぼ排除されていた印象で、あくまでセリフレベルの匂わせで完結するので、もしかしたら完全に映画化するには当時は色々障壁があったが故なのかなあとも思いました(違うかも…笑)。

それよりも、誰しもが善悪を兼ね備えているという一種の”人間性の混乱”が、証明しきれない不可解な未知の事象に対して力づくで「そうである」と決めつけて道理化して確信させていく、、そんな卑しい人間の心のうちをQ.E.D(証明終わり)したテルレス少年の話…というかんじ。

“不条理で理解を超えることは簡単に起きる
ごく当たり前にように
それに身構えること
それが僕が学んだすべてです” (キメ顔のテルレス)

でもっていじめのシーンは痛々しい…

あと、主人公のテルレスを演じた少年をはじめ、サディスティックな一面をみせるバイネベルク演じてた青年やら、モノクロに浮かぶ顔が整いすぎて感心しました…。だいたい寄宿舎ものには端正なお顔が揃う気がします…笑

原作を読んだ方の感想をちらちらみると、結構見方が変わってきそうで面白そうだなと思ったので、近くの本屋で光文社古典新訳文庫のを買ってみようかな。
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