洋画好きのえび

河童のクゥと夏休みの洋画好きのえびのレビュー・感想・評価

河童のクゥと夏休み(2007年製作の映画)
3.8
これ、大好きな映画です。監督は『クレヨンしんちゃん』の映画シリーズに携わってきた原恵一さん。『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』と『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』では監督を務めており、その他クレしん映画でも脚本や絵コンテを担当されています。
なお、木暮正夫さんの児童文学が原作ですが、原作者の許可を得てかなり脚色されているとのこと。

東久留米市に住む小学生の上原康一は、下校途中に川辺に大きな石があるのを見つける。好奇心に駆られてその石を割ってみると、中から干からびた化石のような生き物が出てきた。その生き物は、長い間石の中に閉じ込められていたために干からびてしまった河童の子供であった。長期間眠っていたために自分の名前を忘れてしまったと言うその河童に、康一は「クゥ」と言う名前を付け、クゥは上原家で暮らすことに。当初は人間に警戒心を抱いていたクゥも、上原家の人々と暮らすうちに、上原家の人々を信頼していくのだった。クゥの存在が外部に知られるとクゥの身に危険が及ぶのでは、と危惧した康一の父はクゥの存在を隠しつつ暮らすことを決めるのだが、ある日クゥの存在がマスコミに知られてしまう。様々な理由から、クゥはテレビに出演せざるを得なくなってしまうのだが…

本作では、環境問題、いじめ、マスコミの過激な報道等、社会的なテーマが多々描かれていますが、不思議と重たい感じがしません。それはクゥの可愛らしいキャラクターデザインだったり、過去のクレしんシリーズで原監督が培ってきた子供向けアニメーション映画における優れたバランス感覚が理由なのかもしれません。各テーマを深掘りするのではなく、あくまでも「観客の心にちょっとした引っ掛かりを残す」程度の描写に留めて、クゥとの交流を通じた康一の成長というメインテーマを主軸にした描き方が、クレしん映画と似ているなぁと感じました。とは言え、いじめの描写には結構生々しい台詞もありましたが、子供って意味を深く知らない言葉でも周囲の大人が使っていると簡単に使ってしまうことが多々あるので(しかも子供はその言葉がプラス/マイナスの意味で使われているかどうかは鋭敏に感じとっていると思います)、あのシーンは大人への警告としてそのままで良いのではないかと思います。
また、演出が過剰ではないのに、心がじわっとあたたかくなるのも本作の魅力です。上原家で飼われている犬のオッサンとクゥの会話だったり、クゥと上原家の別れのシーンだったり、悲しいはずのシーンでもあたたかな空気感が漂います。
映像もとても綺麗で、特に、康一とクゥが河童の生き残りを探して訪れる遠野の自然風景は見ていて爽やかな気持ちになれますね。遠野、いつか訪れてみたいのですがいつになることやら…

毎年夏休みの時期が来ると観たくなる作品です。クレしんシリーズが好きな方にもオススメ!