未ソフト化だったカルト作が遂にDVD化。藤田敏八監督と長谷川和彦助監督による1970年代の青春の挽歌。原田芳雄と桃井かおりの初共演。
金持ちをゆすって日銭を稼いでいた根無し草の宏(原田芳雄)は、弟分である卓郎(大門正明)の彼女マコ(桃井かおり)のマンションにしけこむ。あてのない旅に出た三人は。。。
いつもの”しょーもない”藤田敏八演出だが、初の東宝作品でありロケ地の多様さに気合は感じられた。当時の東京と水上温泉の風景が興味深く楽しい。
アメリカン・ニューシネマ風だが、脚本ジェームス三木によると藤田監督はヌーヴェル・ヴァーグを目指していたとのこと。しかし出来上がったのは藤田監督と長谷川和彦の思慮浅い悪ノリが悪目立ちし、ちんけな自滅が描かれるカルト珍作になったように思う。しかし本作で描かれる時代の閉塞感と、閉塞した社会で粋がって見せた制作陣の姿勢は、思春期の想い出のように恥ずかしくも甘美で、現在視点から見るとたまらなくセンチメンタルな気分に浸らせてくれた。
出演の半分近くをトップレスで過ごすフーテン役の桃井かおり(当時22歳)が可愛らしい。原田芳雄(当時33歳)は本作を「嫌でしょうがなかった」と振り返っている。不能で涙を流す女々しさは確かに嫌だったことだろう。
挿入曲「赤い鳥逃げた?」「愛情砂漠」は個人的にツボでとても良かった。
まさかのDVD化は驚いたし嬉しかった。この調子で「銭ゲバ」(1970)、「ニ十歳の原点」(1973)もDVD化してほしい。