垂直落下式サミング

昆虫怪獣の襲来の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

昆虫怪獣の襲来(1958年製作の映画)
3.5
舞台はアフリカ。実験宇宙ロケットの墜落によって放射線を受けたスズメバチが巨大モンスターに突然変異し、アフリカのジャングルを脅かす。
昆虫怪獣の全貌が明らかにされるまで、事件、接近、対決、撃退と、それなりに律儀にモンスター映画マナーとも呼べるべき段取りを踏んでいるから、他のと比べたらそれなりに出来はいい方だった。
こういう映画は、巨大生物といいながら中型車くらいな場合もあるので、サイズが思った以上にデカいのは嬉しい誤算。怪獣と名を冠するだけあって、山から顔を出した巨大蜂にびびったサバンナの動物やアフリカ原住民の部族たちが逃げるところや、原寸大サイズの巨大蜂の大道具が本当に出てきて人間を襲うところなど、しっかりと衝撃的!
アフリカに来た博士のアフリカ見聞日誌として、その時々でナレーションの声が挿入されることで、よりいっそう異国情緒が高まっていくのもニクい演出。
アフリカロケの賜物なのか、野性動物をとらえたネイチャードキュメントとしての素材が多いのも見所。そこに巨大昆虫の映像を合成して逃げているようにみせる特殊効果も見事。
エキストラ含めて、黒人俳優たちが大多数を占めるアフリカを舞台にして怪物をうまく扱っているし、最後まで怪物探検隊についてくる最初の被害者の兄は、なかなか芯のあるキャラクターで気に入った。
ジャングルの悪霊なんて迷信だから怖がりなさんなといって取り合わない老人に、迷信で猿や鳥は逃げませんよドクターと、正論パンチをかまして黙らせるのがイカす。机上論インテリの理知よりも、地元人ならではの経験則が上回る瞬間。黒人俳優の地位が今ほどなかった時代にしては、いい役どころが与えられていたなあと。
でも、中盤の博士たちがアフリカにやってくるクダリはちょっと困る。アメリカから来る白人はキチンとした身なりで、現地でガイド(もとい召し使い)を雇って、大勢の村人たちを荷物持ちに使って、道中油断すると原始部族みたいなのが襲ってくるみたいな、それは無礼でっしゃろ。たまに出てくる無配慮な植民地ばんざーいみたいなのに目を瞑れば、それなりのいい作品ではあるんだけどな。時代ってことで。


YouTubeの見すぎで集中力をつかさどる脳細胞が死滅したと思われるので、ランタイム80分に満たないような昔の短編安物ホラーをみて、体力を取り戻しています。
『アクロスザスパイダーバース』や『ジョン・ウィック4』に、長いって文句垂れる前にテメエの集中の持続はどうなってんだってハナシですらね。リハビリ中。