Mikiyoshi1986

旅芸人の記録のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

旅芸人の記録(1975年製作の映画)
4.2
クストリッツァ「アンダーグラウンド」やベルトルッチ「1900年」の超大作と並び、4時間という長尺で国内の現代史を描き上げたテオ・アンゲロプロス監督の傑作。
1939~52年までの間、ある旅芸人の一座を通して、戦争とイデオロギーに翻弄されてゆくギリシャの漂泊を如実に綴ります。

第二次大戦中の欧州は主にナチス・ファシズムとの戦いであり、戦後は社会主義国家ソ連が悪。そして民主主義国家アメリカが正義という認識が一般的ではないかと思います。
ただ、ギリシャに至ってはその点が異なります。
米英からなる連合軍の進駐によってギリシャはナチス・ファシズムの脅威から脱却し、民衆の誰もがこの解放を歓びました。
しかし、国内の急速な共産主義化を恐れたイギリスはかつての王政派を支援し、ギリシャはそのまま右翼独裁政権とパルチザン左翼勢力との長い内戦へ突入していくことになるのです。

本作で面白いのは、52年から過去の回想が始まり、場所は変わらず時代のみが縦横無尽に往来するという斬新な時間交錯の演出。
ぼさーっと観てたらついつい置いてかれそうになります。
また、ワンシーンをほぼワンカットで撮影しようとする長回しのカメラワークも秀逸です。

難点なのは旅芸人たちの数が多く、しかもほとんどの役名や役柄が説明されないので、一体誰が何をしたのかチンプンカンプンになってしまうところ。
更に遠くからのショットとマスターの画質の悪さで初見では人物の特定がなかなか困難です。
観賞前か後にwebで大筋をおさらいしておいた方が良いのかも知れません。

しかしながら、是非ともリマスターでBlu-ray盤をリリースしてほしい名作です。
ヤクセンボーレ!
Mikiyoshi1986

Mikiyoshi1986