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旅芸人の記録の一のレビュー・感想・評価

旅芸人の記録(1975年製作の映画)
4.0
ギリシャの巨匠 テオ・アンゲロプロス監督作品

圧政、占領、反乱など、他国の干渉や国内の政権交代に揺れる激動のギリシャで、たったひとつの劇「羊飼いの少女ゴルフォ」を演じて廻る旅芸人一座の、1939年から1952年までの愛と裏切りの生々しい日々が、ギリシャ悲劇になぞらえて描かれる

静謐なのに物凄い迫力の映画だった
四時間近くもの超大作という事もあってか、『サタンタンゴ』や『アンダーグラウンド』にも通ずるほどの壮大な物語で、同じように重ねてしまうシーンも多々ある傑作

なんといっても、やはりアンゲロプロスの基本ロングショットや、徹底された長回しによるワンシーンワンカットは唯一無二で、圧倒的な力がある
誰よりもしなやかで美しく、計算されつくしたこの構図は、誰が観てもすぐに釘付けになってしまうはず
そして時折入れられる海をバックにしたシーンの美しさたるや…

話としてはギリシャの複雑な近代史なので掴みにくい部分も多いけど、背景にある戦争が徐々に姿を現してくるので、それほどわかりにくさもない

唐突に我々観客に向かって語り出すシーンなどもあり、どれだけ戦争が悲惨であるかと言うことを生々しく語りかけてくる
そういった残酷かつ悲劇的な叙情詩ではありますが、とにかくぐいぐい引き込まれる映像の力で、これほどスローテンポなのに凄まじい迫力を出せてしまう監督の力量は計り知れない

エンタメ性皆無の観る人は選びまくる作品ですが、間違いなくアンゲロプロスにしか作り得ない傑作でしょう
願わくば改めて映画館で観てみたい

〈 Rotten Tomatoes 🍅87% 🍿83% 〉
〈 IMDb 8.0 / Metascore - / Letterboxd 4.1 〉

2021 自宅鑑賞 No.511 GEO
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