イージーライター

ちゃわんやのはなし ―四百年の旅人―のイージーライターのレビュー・感想・評価

3.0
映画は薩摩焼の陶芸家、当代十五代沈壽官の人生を描くとともに、父、祖父と言ったその先祖の足跡、そして初代が秀吉の朝鮮出兵に伴い日本に連れられてきて薩摩の地に根を張ることになった由来などをドキュメンタリーとして記録している。

作品中、先祖、当代による焼き物がスクリーンに映し出されるが本当に惚れ惚れしてしまうものばかりである。

十五代について陶芸作品だけでなく、彼の葛藤が映画に刻まれている。名人の家系に生まれたことでの祖父や父との差、一方では朝鮮の血をひくということで、一種の引け目みたいなもの、そんなところが語られている。どんな卓越した芸術家でも、やはり悩むところは凡夫同様に泥臭いことがうかがえる。

なお朝鮮から連れられてきたのは薩摩の陶工だけでなく、有田焼の始祖も含めてとのことも映画では語られる。どうそれを思うのかは見る人の自由でありその人の生き方によって代わるものだが、私は、やはり切っても切り離せぬ日本と朝鮮という定義をこのたった一本の映画で再確認した次第である。

監督はこれが初監督となる松倉大夏。日本映画監督協会新人賞の受賞作となった「やまぶき」のプロデューサーであり、この映画と同時期に公開されている良作、石原さとみ、青木崇高主演「ミッシング」も含め多くの素晴らしい映画の助監督も努めている、日本映画界を多面的にすでに支えている人である。

またプロデューサーはフラガール、パッチギ!の李鳳宇。パッチギ!のテーマは、日本朝鮮にある川を超えろというものだったが、この「ちゃわんやのはなし」にも通底するものがあることに気がつく。