つっちぃ

ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版のつっちぃのレビュー・感想・評価

4.0
《ヴェルクマイスター・ハーモニー》
穏やかな街に現れた巨大鯨の見世物興行。"無知"の民を扇動し暴動を起こす"プリンス"。多くのメタファーが少ないセリフと長回しで描かれる映像世界は難解にも見える作品自体が"無知"のまま身を委ねる事への危険も孕んでいる。圧倒的な絵力に飲み込まれる怪作。

思考停止による集団行動の怖さは普遍的なものだが、一見"進歩的"な立ち位置なはずの音楽家エステルが、ヴェルクマイスター音律を批判しピタゴラス音律を絶対だというあたり、人の心は保守か革新か等という二項対立には収まるはずがないよね、等と改めて思う。

全体のなかでちょっと異質だったのは、夜中に眠りたくない子供達がはしゃぎ暴れるシーン。無邪気で可愛いはずの子供達が無垢から無知の境界を超えた時、いつでも暴動予備軍となりうる様で、可愛くもあり怖くもありました...
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