テルマとルイーズの共通点は、あるものから常に逃げながら生きていることだ。
冒頭でテルマの夫に対して自分の意見を伝えることができない様子が印象づけられている。彼女は夫という存在、もっと言えば結婚生活から逃げている。夫が浮気をしている可能性を知っていながらも見て見ぬふりをし、子作りを先延ばしにされても文句を言えずにいるのだ。
一方ルイーズは冒頭から強い女性として描かれている印象だが、彼女が逃げている対象は弱い自分なのだ。作中で何度か彼女がテキサスで経験した出来事について触れられる箇所がある。その度にルイーズは動揺を見せ、話を濁そうとする。その内容は彼女が体験したレイプ被害のことであり、女である自分の弱さから必死で逃げている為に彼女は強い女性としての鎧を纏っているのだ。
この作品で重要なのは、主人公二人の女性は最終的に逃げ切ることを選択したという点だ。ラストシーンで、警察に崖の淵まで追い詰められた二人は自ら車で転落しエンディングを迎える。
世の中にはあらゆる不条理が渦巻いていて、彼女たちに限らず誰しもが何かから逃げながら生きている。その問題に向き合うことだけが正しいのか、正しいことを常に選択しなければならないのだろうか。
（20240403）
