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シャロウ・グレイブのRのレビュー・感想・評価

シャロウ・グレイブ(1994年製作の映画)
3.8
ぜんぜん期待せずに見たからかもしれんけどなかなか面白かった。が、最初の15分くらい(?)はちょっとノレなかったなー。まず、とても大きめなアパートに暮らす三人の若者、真面目な会計士さんデヴィッド、女医のジュリエット、雑誌記者のアレックスが、四人目のルームメイトの選考面接してるとこから始まるんやけど、自分たちがいい仕事に就いてて裕福だからという理由で、やってくる平凡な希望者たちに対して、悪ノリしすぎ、上から目線の嫌味を言ったり、馬鹿にしたり、コケにしたり。別にそれが道徳的に許せないとかいうわけではなく、んー、何かあまりにもリアリティに欠けるというか、さすがにそんな奴らはおらんやろってなった。仮に映画内限定のリアリティにおいて、たまたま嫌なやつのみで構成された小集団があったとして、監督の構築しようとしてるリアリティのレベルにこっちが積極的に合わせにいかなければならないので、馴染むまでは具合が悪い。そういえば、ダニーボイル監督の映画ってそんな作品が多いような……けど、最初は嫌なやつらでしかなかった彼らも、結局そんなに悪い奴らでもなく、まぁ普通の若者。4人目に入ってきた男がアパートでの初夜にODで死んで、彼のスーツケースを開けてみると大金が入ってる。金を自分らのモノにしようと、死体をバラバラに切断して浅く掘られた穴に埋め、さぁ、これから楽しいリッチな生活をおくるぞってところで、真面目な会計士は神経がおかしくなったのか、金を持って屋根裏に引きこもる。で、普通に金を使いたいふたりを金に近づけないようにする。一方、本来死んだ男からその金を回収するはずであったギャングが若者たちを狙いはじめ、さていったいどうなることやら。てな感じに展開していく。軽佻なテンポで、スタイリッシュな映像と編集にて繰り広げられる世界観は、もはや映画のみならず、MVやCMなどでも見慣れてしまった感があるが、90‘sを匂わせる古くさい映像のなかでそれが用いられているため、現代の私にはヴィンテージ的な魅力として感じられた。この様なスタイルが目新しい頃に見ていたら、さぞ新鮮さに欣喜雀躍したことだろう。それはさておき、二転三転、ツイストをきかせまくってくるストーリーから、いつの間にか、目が離せなくなっているではないか。中盤からは、もはや日常的な善悪の概念を超えた感覚で、ひとりの人物へと感情が移入していく。そう考えるとキャストのラヴァブルさ加減が絶妙。特に紅一点であるジュリエットを演じるサリーフォックスの、微妙にすべてにおいてハズしている感覚は興味深い。のちにトレインスポッティングで見事なスター性を開花させたユアンマクレガーの不遜なチャーム、つねにナーバスに病んでるクリストファーエクルストンの不気味、三者三様に面白かった。とはいえ、やっぱいけすかない奴らなのに変わりはないので、感情移入っつっても、何とかかんとか乗っかってるくらい。人体をバラバラにするときとか、エグいシーンが待ち受けているのでは、と恐ろしかったけれども、コミカルと呼べる範囲内だったので、安心。冷たい熱帯魚に比べたらこのくらい屁でもない。あ、そうそう、いちおう本作、ドロドロじめっとしたサスペンスとは違って、カラッとブラックコメディなタッチなので、過度に恐れる必要はないかと思われます。ただ最後はかなり痛かったね。思わず、イデデデデデデデと口走ってしまった。しがない小悪党どものまぁまぁどうでもいい犯罪コメディと言ってしまえばその通りなのだが、それをここまで面白く仕上げたダニーボイルは、僕のような素人にはよくわかりませんが、きっとすごい手腕家なのでしょう。自分的には、そんなめちゃめちゃ好きでもないし、めちゃめちゃ嫌いでもないくらいの位置づけです。今のところスティーブ・ジョブス一推し、だいぶ落ちてトレインスポッティング二推しくらい、三推しコレかな?って感じです。本作を見て、まだ見てないダニーボイル作品もいちおう見てみようかな?という気になれました。
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