ノラネコの呑んで観るシネマ

あまろっくのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

あまろっく(2024年製作の映画)
4.4
これはなかなかに素敵な人情喜劇。
リストラさえれて尼崎の実家に戻った江口のりこの前に、オヤジの鶴瓶師匠が再婚相手としてハタチの中条あやみを連れて来る。
尼崎出身の中村和宏監督をはじめ、脚本家も出演者も軒並み関西人という、まさに関西人の関西人による関西人のためのご実家ムービー。
尼崎の海には尼ロックという閘門があって、人知れず高潮や台風から街を守っているらしい。
グータラだけどやる時はやる、自称我が家の尼ロックのオヤジを挟んだ二人の女性が、ある事件のあと不器用に家族になってゆく物語だ。
江口のりこは、頭はいいけど我が強くて、他人との関係をうまく築けない。
いつも笑顔の中条あやみは、複雑な家庭で育ち家族の愛を知らない。
あらゆる点で対照的な二人が、不思議な化学反応を起こしてゆくのだが、唯一の共通点が、二人とも中味はちょっとタイプの違った大阪のおばちゃんと言うことw
この何とも言語化しにくい関西人の独特なノリ、と言うか血が、触媒となって徐々に二人を結びつけて行く。
江口のりこも中条あやみも凄くいい。
中条あやみなんてお嬢様っぽい役が多いが、本作のパワフルな尼崎女子のキャラクターはまるで水を得た魚の如し。
私もハーフ関西人だから分かるが、関西の血って濃いんだよな〜
フォトジェニックに描写される尼崎の風景に、人々が記憶している街の歴史。
観ると尼崎に行きたくなる、故郷への愛の詰まった見事なご当地映画だ。