チッコーネ

ドイ・ボーイ:路地裏の僕らのチッコーネのレビュー・感想・評価

3.5
10年以上政情不安が続くタイと、軍事政権 VS 少数民族武装勢力の対立が続くミャンマーの背景を、うまく脚本に取り込んだサスペンス、東南エイジアンノワールと呼んで差し支えない出来映え。
エンタメやアート作品にない、不穏な現実を感じさせるスリリングなタイ映画として楽しめる。

前半はフラッシュバックのような回想シーン、長めの一場面が多く挿入され、どこか幻想的。
ほぼロケ撮影で、豊かな緑と共にあるチェンマイの風景、密林のようなミャンマー国境付近など、美しい背景の場面は特に印象に残る。

夜の世界に生きる若者たちの姿を描いた作品でもあり、メインキャラクターふたりだけでなく、タイ格差社会の貧困層に属すサブキャラクターたちがコロナ禍に対峙する姿も、丹念に描写。
また女性の恋人と同棲しながら平然と男娼として働き続ける主人公のいびつな日常を描く傍ら、高潔な理想に若さをぶつけるゲイ・カップルも登場させており、クィアなバランス感覚は秀逸。