《一月の声に歓びを刻め》
人に言えない辛く深く染み付いた心の傷はやがて自らを責める鈍器と変わる。被害者が責任を感じてしまう不合理さ。丁寧な正月準備、伝統の太鼓の音、忌まわしい印を焼き払う。何も解決するわけではないのはわかっているが思いを"何か"に託すことで前に進めるのかもしれない。
何も出来なかった傍観者としてのマキ、加害者としての誠と海、被害者としてのれいこ。間接的な被害者として親の愛を受けられなかった美砂子や真摯に寄り添おうとするトトが丁寧に描かれていた。
第二章の"人は皆罪深い"という海の言葉は、海自信、目の前の父だけでなく、章をまたいで、マキやれいこに届き響いていた。三章構成の共鳴が素晴らしい。
三章がモノクロだった理由に思いを巡らせる。そう、ヌテラは笑顔になるよね。