真世紀

白日の下の真世紀のレビュー・感想・評価

白日の下(2023年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭、今年の二本目は社会派香港映画。実際のケアハウスでの入所者虐待事件を題材とする。

ある入居者のもとへカナダから香港へ戻ってきた孫娘が訪問。老人、障がい者の認可外の施設に通いだし、手伝いを申し出る(自身も調理などを担当している入居当事者からは「一週間通ってから言え」とすげなく扱われたり)。

このヒロイン、実は新聞記者の潜入取材。約八十人を自らも弱視のハンディを持つ施設長、二人の介護士でみている施設では職員による虐待が横行。言うことを聞かない者には殴打や手かせでの拘束も当たり前、酷い時にはホチキスの針を二の腕にうちこむなんてのまで(うん、そんなのリアルでは大日本プロレスのデスマッチぐらいでしか観たことないよ)。

なお、よほど酷い事例でしょ、と思わぬでもないけど、今日の新聞にも東京都足立区の施設で利用者に引っ掛かれてついかっとなった職員が殴打、利用者死亡なんて事件が出ているように、日本でも…だと思うよ。

問題があるとは薄々感じている施設に預けざるを得ない側の複雑な心境、告発記事に成功して、たとえ大きく世間の耳目を集めさせても風化というマスコミの限界、調査報道もいまや、風前の灯という状況などにも触れる。

施設長や官の無策、法の限界はクローズアップされるも、ちと松金よね子似のベテラン職員ら、虐待する側の論理にも、もう少し踏み込んで欲しかったとか、貧困ビジネスの金主サイドとか、もっと構造的にそちらの事情もなんて思いつつ。されども、劇中の劣悪な施設は氷山の一角、公認施設は八年から十数年の順番待ちという現状もテロップで紹介され、ただただ苦い。
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