寝耳に猫800

ゴールド・ボーイの寝耳に猫800のレビュー・感想・評価

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)
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安い喩えをすればパズルのピースを順々に提示して後から組み上げていくようなシナリオ、そういうタイプのシナリオなので冒頭30分くらいがあまりにも「お膳立て」のために存在しておりちょっとしんどかった(この部分のためにこの情報が存在しているんだろうな、というのがあからさますぎる)、そして、その必要なピースを用意するためにいくらなんでも人を殺したり不幸にしたりしすぎている、しかしただでは終わらせないというか、構成の妙は確実にある類の物語だと思う
(この辺りは個人の好みだが、少なくとも自分はこういう種蒔きと種明かしを観るために映画館に足を運ぶのではないのだなと再認識した)

演出の問題またはキャラクター造形の問題なんだろうか、スクリーンに映っている役者が、カメラが回る直前に「グッ」と役を入れているのが伝わってきてしまう
(冒頭で観客に提示される殺人者についてはシラを切っているのでそのわざとらしさが真相を隠す犯人らしさに繋がっている面も前半はあるが、それ以外の人は結構苦しそうだった)

手練の役者も多いのでみんなそれでも演技ができてしまうのだが、声を荒げるとき、椅子を蹴飛ばすとき、涙するとき、そういう「グッ」が映っていて、スクリーンのこちら側に伝播してしまう、これは個々の役者というより演出に問題があるはずなんだよな多分、殺人者は酷いことをした後に壮大な音楽を聴くとか鼻歌を奏でるとかそういう既視感のあるキャラ造形にも一因はある

沖縄の美しい景色やカメラの上手さ(特に色味が素晴らしい)があるので画としてはかなり観ていられるのだがカメラが動くと話が変わってくる、物語の種類からして必要な情報を提示しないといけないのは分かるがカメラポジションの移動から作劇の意図が滲みすぎている、でもこれはそこまで気にならない

追伸 :資本金20億円強の会社が警察組織を牛耳る規模と実権を持っているイメージが全く湧かない
追伸2:岡田将生の「お前…………何?」はめちゃくちゃよかった、体感5秒くらい溜めてるように感じる溜めの長さ
追伸3:主要人物の苗字が打越と上間なので著名な沖縄フィールドワーク社会学者2人の顔が浮かんだ、偶然だろうか、そして他に出てくる苗字が安室と上原なのはあまりにも沖縄苗字がすぎる