てるる

タタミのてるるのレビュー・感想・評価

タタミ(2023年製作の映画)
4.5
東京国際映画祭2023 ⑤

今回のTIFFでは1番良かった作品。

イランはイスラエルとの対立により、スポーツにおいてイスラエル選手との対戦を認めていない。

2019年の柔道世界選手権で、イランの柔道家モラエイ選手がイラン政府からの命令で棄権するよう強制された事件にインスパイアされた作品。

モラエイ選手は男性だけど、本作の主人公は女性で祖国には夫と子供。

スポ根ものとして柔道の試合シーンもハラハラだけど、試合に出るなという命令に従うのか否か。

更には母国にいる家族はどうなるのか?
イランチームを率いるコーチや国際柔道連盟はどうするのか?

もうあちこちでスリリングな展開の連続で後半は息つく暇がない。

モノクロの映像と狭いアスペクト比も、主人公の女性、ひいてはイランの女性たちの制限された人生を表している。

他にも時代を感じさせたくないという意図もあってモノクロにしたんだとか。

アスペクト比についてもラストでの使い方が上手くて、メッセージ性のある作品というだけでなく、映画としての作りも上手い。

ただ、テーマがテーマなだけに簡単に作られた映画ではない。
共同監督兼コーチ役のザーラ・アミールさんは元々イランから亡命した女優。
身に危険が及ぶかもしれないということで、制作は秘密裏に行われたという。

最初はガイ・ナッティブさんが脚本を書き、「聖地には蜘蛛が巣を張る」を観てザーラさんをコーチ役にキャスティング。

その後、実際に亡命した経験があるザーラさんがいてこそリアルなものが描けるということで共同監督になったという経緯。

ちなみにタイトルだったり、劇中で和太鼓の音が鳴っていたりと日本へのオマージュも。

イランが選手に圧力をかけているケースは他のスポーツでも多々あるけど、柔道はまず礼から始まったり、畳に血が付いたらし合いを止めるなど、リスペクトに溢れたスポーツだから選んだという理由もあるらしい。

これはホントに日本でも一般公開して欲しい。
一般公開されたらまた観に行きたいし、パンフレットとか読みたい。
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